ウィリアム・マクギリヴレイ

スコットランドの博物学者、ウィリアム・マクギリヴレイ：鳥類学への多大な貢献

ウィリアム・マクギリヴレイ（1796年1月25日 - 1852年9月4日）は、19世紀を代表するスコットランドの博物学者、鳥類学者です。彼はスコットランド北東部のオールド・アバディーンに生まれ、ハリス島で幼少期を過ごしました。その後アバディーンに戻り、キングス・カレッジを卒業。医学の道を志しましたが、学位を取得せず、博物学の研究に進むことになります。

1823年にはエディンバラ大学で博物学教授を務めたロバート・ジェイムソンの助手となり、研究活動を開始。1831年にはエディンバラ王立医学校の博物館学芸員に就任、さらに1841年にはアバディーンのマリスカル大学の博物学教授に昇任するなど、教育機関でも活躍しました。

マクギリヴレイの鳥類学における功績は計り知れません。特に著名なのは、アメリカの鳥類学者ジョン・ジェームズ・オーデュボンとの共著です。『アメリカの鳥類』に関連する『鳥類の生態』（Ornithological Biography, 1831年 - 1839年）は、北米の鳥類に関する貴重な記録であり、両者の緊密な協力関係を示すものとなっています。オーデュボンは、マクギリヴレイへの敬意を表し、アメリカムシクイ科の一種にMacGillivray's warbler（ニシノドグロアメリカムシクイ）という学名を付けました。

マクギリヴレイは、鳥類分類において鋭い洞察力を持っていました。例えば、ズキンガラス（Corvus cornix）とハシボソガラス（Corvus corone）の差異をいち早く認識していました。当時は両種を同一種とみなす考え方が一般的でしたが、2002年に遺伝子解析の結果からズキンガラスが独立種として認められることになり、マクギリヴレイの先見性が改めて評価されています。

彼の研究対象は鳥類に留まりませんでした。哺乳類、植物、軟体動物など幅広い分野で研究を行い、数々の著作を発表しています。代表的な著書には、『イギリス産植物の体系的分類』（A Systematic Arrangement of British Plants, 1830年）、『イギリス哺乳類誌』（A History of British Quadrupeds, 1838年）、『イギリス鳥類誌』（A History of British Birds, 1837-1852年）などがあります。これらの著作は、精緻な記述と精確な図版によって高く評価され、当時の博物学研究に大きな影響を与えました。また、『エディンバラ自然史・物理科学雑誌』にも多くの図版付きの論文を発表しています。他にも、アレクサンダー・フォン・フンボルトの著作の翻訳や、化石植物に関する書籍の図版制作など、多岐にわたる活動を行いました。

私生活では、息子のジョンも博物学者としてHMSラトルスネーク号の世界周航調査に参加し、報告書を残しています。もう一人の息子ポールは植物学者となり、アバディーンの植物相に関する著作を残しました。このように、マクギリヴレイ家は博物学の世界に大きく貢献した名家と言えるでしょう。

ウィリアム・マクギリヴレイは、数多くの著作や博物館での活動を通して、スコットランドのみならず世界中の博物学の発展に貢献した重要な人物でした。彼の研究は、現代の生物学研究にも繋がる貴重な遺産であり、今後も高く評価されていくことでしょう。

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