ウィリアム・マクスウェル (第5代ニスデール伯爵)

ウィリアム・マクスウェル：激動の時代を生きたジャコバイト貴族

ウィリアム・マクスウェル（1676年 - 1744年）は、第5代ニスデール伯爵であり、スコットランド貴族として激動の時代を生きました。彼は、ステュアート朝への忠誠を貫き、ジャコバイトとして歴史に名を刻みました。

生い立ちと信仰

1676年、ウィリアム・マクスウェルは、第4代ニスデール伯爵ロバート・マクスウェルと、初代ダグラス侯爵ウィリアム・ダグラスの娘ルーシーの間に生まれました。幼くして父を亡くした彼は、母から熱心なカトリック信仰とステュアート王家への忠誠心を深く教え込まれました。

1697年、成人を迎えたばかりのマクスウェルは、フランスのサン＝ジェルマン＝アン＝レーにあったジャコバイト宮廷を訪れ、名誉革命によって故国を追われたジェームズ2世に忠誠を誓いました。そこで彼は、ジェームズ王の側近であったポウィス侯爵の娘、ウィニフレッド・ハーバートと出会い、1699年に結婚しました。その後、妻と共にテレグルズ城に戻り、生活を送りました。

当時のスコットランド低地地方では、国教会を信仰する人々が大多数を占めており、マクスウェル家のような有力なカトリック信徒は少数派でした。そのため、ニスデール伯爵家の領地は、長老派教会の勢力から頻繁に攻撃を受けました。また、マクスウェル自身も、イエズス会司祭を匿っているという嫌疑や、ジャコバイト勢力との関係を疑われ続けました。

ジャコバイト蜂起と投獄

1715年、ジャコバイト反乱が勃発すると、マクスウェルはしばらくの間、態度を決めかねていました。しかし、最終的にはジェームズ3世への忠誠を表明し、ダンフリーズとジェドバラで蜂起を宣言、トマス・フォースター将軍が率いるジャコバイト軍に合流しました。しかし、同年11月上旬に起こったプレストンの戦いでジャコバイト軍は敗北し、マクスウェルは他の指導者たちと共に捕らえられ、ロンドン塔に収監されてしまいます。そして、反逆罪で有罪判決を受け、死刑を宣告されました。

奇跡の脱獄

死刑執行予定日は、1716年2月24日と決定しました。絶望的な状況の中、マクスウェルの妻ウィニフレッドは、夫を救うために大胆な計画を実行します。彼女は、夫の牢への出入りを許可されていたことを利用し、処刑前夜、用意周到な手引きによってマクスウェルの脱獄を成功させたのです。マクスウェルは、ウィニフレッドの侍女の衣服を身に着け、女装することで看守の目を欺き、ロンドン塔からの脱出に成功しました。

亡命と晩年

脱獄後、マクスウェルはローマに逃亡し、妻ウィニフレッドと再会を果たしました。異国の地で、経済的には恵まれないながらも、夫婦は幸福な生活を送りました。そして、1744年3月2日、マクスウェルは異国の地で静かに息を引き取りました。故郷に戻ることなく、波乱に満ちた生涯を終えたのです。

ウィリアム・マクスウェルの生涯は、信仰と忠誠、そして愛に彩られたものでした。彼は、自らの信念を貫き、激動の時代を生き抜いた人物として、歴史にその名を刻んでいます。

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