ウィリアム・ワーズワース (作曲家)

ウィリアム・ブロックレスビー・ワーズワース（William Brocklesby Wordsworth, 1908年12月17日 - 1988年3月10日）は、20世紀のイギリス、特にスコットランドの音楽界で重要な足跡を残した作曲家です。彼は1908年にロンドンで生を受け、その生涯の多くを音楽の創造と振興に捧げました。

彼の音楽教育は、若年期から本格的に始まりました。1921年から10年間にわたり、ジョージ・オールドロイドのもとで和声学と対位法を深く学んだことは、彼の作曲家としての揺るぎない基礎を築きました。その後、1934年から1936年にかけては、さらに研鑽を積むため、エディンバラ大学にて著名な音楽学者・作曲家であるドナルド・フランシス・トーヴィーに師事しました。この時期の学びは、ワーズワースの音楽的視野を広げ、独自のスタイルを確立する上で重要な影響を与えたと考えられます。

キャリアの初期はイングランドを拠点に活動していましたが、1961年からは生活と活動の場をスコットランド、特にインヴァネスシャー地方へと移しました。この移住は、彼の音楽活動に新たな方向性をもたらしました。彼はスコットランドの音楽シーンの発展に強い関心を持ち、特にスコットランド作曲家協会の設立においては中心的な役割を果たしました。協会の活動を通じて、彼はスコットランドの同時代の作曲家たちと交流し、彼らの作品が国内外で広く認知されるための基盤作りに貢献しました。

ワーズワースの音楽スタイルは、基本的にロマン主義の伝統に根ざした調性音楽です。彼は明確な形式と美しい旋律を重視し、聴衆に親しみやすい一方で、内面的な深さも兼ね備えた楽曲を数多く生み出しました。その作品数は100を超え、管弦楽、室内楽、声楽など、幅広いジャンルに及びます。

彼の主要な作品群は以下の通りです。

管弦楽曲

交響曲：第1番から第8番までの8曲を作曲しており、これらは彼の創作活動の中心を成すものです。
協奏曲：特定の楽器のために書かれた協奏曲も重要な作品です。1946年にはピアノ協奏曲を、1955年にはヴァイオリン協奏曲を、そして1962年にはチェロ協奏曲を発表しています。

室内楽曲

弦楽四重奏曲：全6曲が知られており、1941年の第1番から1964年の第6番まで、四重奏という親密な編成で彼の音楽的探求が示されています。
ヴィオラのための作品：ヴィオラという楽器への愛着が深く、ヴィオラとピアノのための作品を複数残しています。これには、1935年の間奏曲、1961年のソナチネ ニ長調 作品71、そして1972年の3つの小品（前奏曲、悲歌、スケルツォ）作品93が含まれます。また、珍しい編成として、ヴィオラとギターのためのカンヴァセーション・ピース 作品113（1983年）があります。

独唱曲

* シェイクスピアの四つの歌曲 作品103（1977年）：声楽作品としては、声、ヴィオラ、ピアノという特異な編成のために書かれたこの歌曲集があります。

これらの作品群は、ワーズワースの多才さと、様々な楽器や編成に対する深い理解を示しています。彼の音楽は、20世紀におけるロマン主義音楽の伝統を継承しつつ、独自の個性を確立した例として評価されています。

ワーズワースに関する情報は、「ハーバード音楽伝記辞典」などの信頼できる文献に収録されており、その生涯と作品は現在も研究の対象となっています。

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