ウィルディ・ピストル

ウィルディ・ピストル (Wildey Pistol)

1970年代初頭に、ウィルディ・ムーア氏によって設計・開発された自動拳銃です。最大の特徴は、当時としては珍しい強力なマグナム弾を連続して発射できる点にあります。

この銃が市場に姿を現したのは、同時期に人気を博した.44オートマグの販売開始から間もない頃でした。当初は「ウィルディ・45マグナム」や「ウィルディ・ガスオート」といった名称で知られ、ライバルである.44オートマグよりも大口径である.45口径を使用できる点を主なセールスポイントとしていました。1979年に開発されたデザートイーグルよりも早く市場に出回っていたにもかかわらず、商業的な成功や知名度においては苦戦を強いられました。

その後、ウィルディ・ピストルは使用できる弾薬の口径を拡充し、多様なバリエーション展開を行います。しかし、対応可能な最大口径が.475口径であったため、さらに大口径の.50口径弾を発射できるデザートイーグルに「最強のハンドガン」という評価を譲ることになり、現在に至るまでその影に隠れがちな存在となっています。

その販売元も変遷をたどりました。かつては銃器部品を扱うStoeger Corp.から提供されていましたが、商業的な成果が得られず販売を終了。その後、名門ウィンチェスター社の協力を得て、現在はウィルディ・ガンズ社が製造・販売を手掛けています。

ウィルディ・ピストルの外観は、同じマグナム・オートである.44オートマグと共通する要素が多く見られます。素材にはステンレススチールが用いられ、シルバーカラーのモデルのみが生産されています。バレルは重量のあるヘビーバレル仕様で、その上部には特徴的な大型のクーリングホール（冷却孔）が多数設けられています。バレルを除くスライドやグリップ部分は、コルト・ガバメントをベースにしたカスタムモデルのような印象を与えます。全体的なフォルムは、ガバメントの先端を切り詰めたフレームに.44オートマグのようなバレルを取り付けたかのようです。

作動方式には、名称の一つにも冠されている通り「ガス・オペレーション」を用いた回転ボルト式セミオートマチックを採用しています。これは、発射時の燃焼ガスを利用してボルトを後退させ、次弾を装填する機構です。この方式の特徴として、バレルの付け根と下部フレームの間に露出した細いガイドロッドを見ることができます。ガスシステムを採用しているため、バレルの交換が比較的容易であり、一部のパーツを変更するだけで様々な種類の弾薬に対応させることが可能です。専用弾の供給不足が商業的失敗の一因となった.44オートマグとは対照的に、ウィルディ・ピストルは現在も生産が続けられています。

銃身の長さは5インチから最大18インチまで幅広く用意されており、銃床を取り付けたカービンモデルも存在します。使用可能な弾薬は多岐にわたり、.45ウィンチェスターマグナム、9mmウィンチェスターマグナム、そして本銃独自の.475ウィルディマグナムや.45ウィルディマグナムのほか、2003年からは.44オートマグ（.44AMP弾）に対応したモデルも登場しています。

バリエーション

主なモデルとして、以下のバリエーションが存在します。

サバイバー (Survivor): サテン仕上げが特徴のモデルです。銃身長（5インチ、6インチ、7インチ、8インチ、10インチ、12インチ、14インチ、18インチ）、トリガーガードの形状（角形または丸形）、口径（.44から.475まで）を自由に選択できます。
ハンター (Hunter): マット仕上げのモデルです。サバイバーと同様に、銃身長、トリガーガード形状、口径のオプションを選択可能です。
ウィルディ・カービン (Wildey Carbine): 18インチの長銃身に、フォアグリップとスケルトンタイプのストックを装着したモデルです。サバイバー、ハンターと同様のオプションが選択できます。

登場作品

ウィルディ・ピストルは、そのユニークな外観と存在感から、様々なメディア作品に登場しています。

映画・テレビドラマ
『スーパー・マグナム』：主人公ポール・カージーが使用。
『デスペラード』：エル・マリアッチが使用（発砲には至らず）。
『リアルブラッド』：ガソリンスタンド店員が使用。
漫画・アニメ
『ANGEL PARA BELLUM エンジェルパラベラム』
『GREY』：主人公グレイが使用。
『ジ・エッジ』：主人公・御子神鋭士が使用。
『四つ葉のマック』：警官が使用。
『リトルコップ』：武者高志が使用。
ゲーム
『天使ノ二挺拳銃』：ジェイの右手の得物として登場。
『バイオハザードヴィレッジ』：「S.T.A.K.E」の名称で登場。

ウィルディ・ピストル