ウィルデンシュタイン作品番号

ウィルデンシュタイン作品番号：美術史における権威と論争

ウィルデンシュタイン作品番号とは、ウィルデンシュタイン一族が編纂した、クロード・モネ、エドゥアール・マネ、ポール・ゴーギャンといった巨匠たちの作品目録に付された識別番号です。これらの画家作品を特定する上で、この番号は非常に重要な役割を果たしており、特にモネの作品に関しては、作品番号の有無が真作か否かの判断基準として広く用いられています。

モネ作品とウィルデンシュタイン番号

ダニエル・ウィルデンシュタインは1974年から、モネの油彩画、デッサン、パステル画を網羅した5巻からなるカタログ・レゾネを刊行しました。油彩画だけでも2000点以上を収録する大規模なもので、1996年には改訂版も出版されています。このカタログ・レゾネに掲載されているかどうかが、現在ではモネ作品真贋の重要な指標となっています。著名な研究者が真作と認めた作品であっても、ウィルデンシュタイン社が掲載しなければ市場での取引が困難になる現状があり、その権威性の高さ、そして同時に問題点も浮き彫りになっています。

2011年には、所有者がウィルデンシュタイン社に掲載を求めた訴訟がBBCのドキュメンタリーで取り上げられました。裁判では、フランスの裁判所が作品の真贋判定はできないとしつつ、掲載の可否は編纂者の権限であると判断し、請求を棄却しました。この判決は、ウィルデンシュタイン作品番号の絶大な影響力と、同時にその判断基準に対する疑問を改めて示すものとなりました。

マネとゴーギャン作品におけるウィルデンシュタイン番号

マネの作品に関しては、ポール・ジャモとジョルジュ・ウィルデンシュタインが1932年に2巻本のカタログ・レゾネを刊行し、1975年には改訂版が出版されました。一方、ゴーギャンのカタログ・レゾネはジョルジュ・ウィルデンシュタインが1964年に初版を刊行、その後、息子のダニエル・ウィルデンシュタインが2001年に改訂版の第1巻を刊行し、現在も継続中です。

ウィルデンシュタイン作品番号の意義と課題

ウィルデンシュタイン作品番号は、美術史研究において重要な役割を果たしています。膨大な作品群を体系的に整理し、作品を識別、分類するための重要なツールとなっています。しかし、その権威性ゆえに、掲載されなかった作品は市場価値が著しく下がるなど、問題点も指摘されています。

編纂者の主観的な判断が作品価値に大きな影響を与える現状は、公平性や透明性という点で課題を残します。一方で、カタログ・レゾネが長年にわたって蓄積された専門家の知識と経験に基づいていることは確かであり、美術市場における重要な指標の一つであることは否定できません。

今後、新たな研究や技術革新によって、より客観的で信頼性の高い作品鑑定方法が確立されることが期待されます。ウィルデンシュタイン作品番号は、美術史における重要な要素であると同時に、今後の美術史研究における課題を示唆していると言えるでしょう。

もう一度検索