ポール・ゴーギャン

ポール・ゴーギャン:波乱の生涯と独自の芸術世界



ポール・ゴーギャン (1848年6月7日-1903年5月8日) は、フランスを代表するポスト印象派画家です。本名はウジェーヌ・アンリ・ポール・ゴーギャンで、近年はフランス語の発音に近い「ゴーガン」という表記も用いられています。彼の生涯は、株式仲買人としての成功から絵画への転身、そして文明からの逃避行へと続く、波乱に満ちたものでした。その独自の芸術は、後世の画家たちに多大な影響を与え続けています。

パリから世界へ、そして絵画



1848年、二月革命の年にパリで生まれたゴーギャンは、共和主義者のジャーナリストである父と、社会主義者であった祖母の血を受け継いでいました。幼少期は、父の職を失ったことにより、一家でペルーに移住するなど、不安定な状況の中で過ごしました。ペルーでの生活は、後のゴーギャンの作品に影響を与えたと考えられています。7歳でフランスに戻り、スペイン語を話す少年はオルレアンフランス語を学び、その後海軍予備校受験に失敗するも、商船の水先人見習いとして世界中を航海しました。

海軍除隊後、ゴーギャンはパリ証券取引所の株式仲買人として成功を収めます。裕福な生活を送る中で、絵画への関心を深め、1873年頃から余暇に絵を描き始めました。印象派の画家たちと交流を持ち、カミーユ・ピサロらに師事しながら、自身の画風を確立していきます。しかし、1882年パリ株式市場の大暴落は、彼の生活を大きく変えました。収入が激減したゴーギャンは、画家としての道を本格的に歩み始めるのです。

ブルターニュ、そして南洋へ



経済的な理由から家族と離れてブルターニュ地方のポン=タヴァンに移住したゴーギャンは、そこで若手画家たちと交流し、独自の画風を確立していきました。鮮やかな色彩と大胆な構図、そして象徴的な主題を取り入れた彼の作品は、点描主義を否定し、フォークアートや日本の浮世絵からの影響も見て取れます。「クロワゾニスム」と呼ばれる、平坦な色面と輪郭線を特徴とする独自の表現技法を確立し、その後の作品に大きな影響を与えています。

1887年にはパナママルティニーク島を訪れ、その後、フィンセント・ファン・ゴッホとアルルで共同生活を送ることになります。しかし、2人の芸術観の相違から関係は悪化、ゴーギャンはアルルを去ることになります。

ゴーギャンにとって大きな転機となったのは、タヒチへの移住です。ヨーロッパ文明からの逃避を願った彼は、タヒチで独自の文化と自然に触れ、数々の傑作を生み出しました。「イア・オラナ・マリア」や「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」といった作品は、彼のタヒチ時代の代表作として知られています。

晩年と死



タヒチでの生活後、ゴーギャンはフランスに戻りますが、再びタヒチ、そしてマルキーズ諸島へと渡ります。マルキーズ諸島では、地元住民との交流や生活を通して、独特の文化に触れ、新たなインスピレーションを得て作品を制作し続けます。しかし、健康状態は悪化し、貧困と孤独の中で彼は亡くなりました。1903年5月8日、マルキーズ諸島のアトゥオナにて、48歳の生涯を終えます。

後世への影響



生前、ゴーギャンは必ずしも評価されたわけではありませんでしたが、没後彼の作品は高い評価を受けるようになり、多くの画家や作家に影響を与え続けました。サマセット・モームの小説『月と六ペンス』の主人公のモデルともなったゴーギャン。その生涯と作品は、現代においても、私たちに多くの示唆を与えてくれるでしょう。2015年には彼の作品が、史上最高額となる3億ドルで落札され、その人気は衰えることを知りません。彼の絵画彫刻、そして文学作品は、今も世界中で多くの人々を魅了し続けています。

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