ウィルフリード・スピンナー

ハインリヒ・ウィルフリード・スピンナー（1854年10月12日 - 1918年8月31日）は、スイス出身の宣教師であり、日本のキリスト教史に足跡を残しました。ドイツの普及福音教会から派遣され、日本での伝道活動とドイツ人コミュニティへの貢献を行いました。

生い立ちと修学

1854年、スイスのチューリッヒで生まれたスピンナーは、チューリッヒ大学神学部で神学を修め、哲学と神学の国家試験に合格しました。その後、ドイツ、デンマーク、オランダ、ベルギーの大学で研究を重ね、幅広い知識と学識を身につけました。

日本での伝道活動

1883年、スピンナーは友人たちとキリスト教文化をアジアに広めるための伝道会を設立しました。1885年（明治18年）に来日し、東京神田で伝道活動を開始し、普及福音教会を設立しました。彼は、ルター派のザクセン・ワイマール国教会の聖職者として、東京と横浜に滞在するドイツ人のためにドイツ教会を設立し、牧師として精神的な支えとなりました。当時、東京にはお雇い外国人として来日した多くのドイツ人技師などが暮らしており、スピンナーの教会は彼らの心の拠り所となりました。

スピンナーは、日本の政財界にも幅広い人脈を築きました。青木周蔵、有栖川宮威仁親王、北白川宮能久親王、桂太郎、品川弥二郎など、当時の日本の指導者層と親交を深めました。これらの交流を通じて、日本の近代化を支援するとともに、キリスト教への理解を広げることに貢献しました。

1887年には本郷壱岐坂に会堂を建設し、新教神学校を設立して、人材育成にも力を注ぎました。さらに、1888年には機関紙『真理』を発行し、キリスト教の教えを広く社会に伝えようとしました。

帰国とその後

1891年、スピンナーはドイツに帰国しました。彼の日本での活動は、三並良や向軍治など、後の日本のキリスト教界を担う人材を育成しました。

ハインリヒ・ウィルフリード・スピンナーは、日本におけるキリスト教の普及と、ドイツ人コミュニティの支援に尽力した宣教師として、その名が記憶されています。


参考文献
高橋昌郎『明治のキリスト教』吉川弘文館 2003
中村敏『日本キリスト教宣教史』いのちのことば社 2009

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