ウィル・オブ・ザ・ピープル

ウィル・オブ・ザ・ピープル

『ウィル・オブ・ザ・ピープル』（英: Will of the People）は、イギリスを代表するロックバンド、ミューズ（Muse）が2022年に発表した通算9作目となるスタジオ・アルバムです。2022年8月26日に、主にワーナー・レコードからリリースされましたが、日本国内ではソニー・ミュージックジャパンインターナショナルを通じて発売されました。

制作背景と音楽性

本作の制作は、バンド自身によるセルフプロデュース体制で行われました。中でも、ドラマーのドミニク・ハワードがプロダクションにおいて中心的な役割を担ったとされています。サウンド面では、エレクトロニックなアプローチを大胆に取り入れた前作『シミュレーション・セオリー』から一転し、バンド本来のラウドでダイナミックなロックサウンドへと立ち返っています。

しかし、単に原点回帰するだけでなく、ミューズのキャリアを通じて培われた多様な音楽性が結集した作品となっています。オルタナティヴ・ロックを核としながら、クラシックの荘厳さ、ヘヴィメタルの攻撃性、プログレッシブ・ロックの構成力、インダストリアルの重厚さ、シンセポップのキャッチーさ、そしてエレクトロニカの質感まで、実に多彩な要素が大胆かつ緻密に織り交ぜられています。バンドのフロントマンであるマシュー・ベラミー自身も、1999年のデビュー以来、アルバムごとに様々なサウンドやジャンルを探求してきたミューズの音楽的歩みの「集大成」となる作品だと位置づけています。この言葉通り、本作は彼らのこれまでの経験と挑戦の軌跡を示すかのような、幅広いサウンドスケープを持つアルバムと言えるでしょう。

商業的な成功とNFTへの挑戦

『ウィル・オブ・ザ・ピープル』は商業的にも大きな成功を収めました。特にイギリスでは、アルバムチャートで初登場1位を獲得し、バンドにとって7作連続となる首位記録を樹立しました。これは、UKロックシーンにおけるミューズの揺るぎない地位を改めて示す結果となりました。

また、本作はデジタル分野における新たな試みとしても注目を集めました。限定1000個で販売されたNFT（非代替性トークン）版は、発売後すぐに完売しました。特筆すべきは、このNFT版がイギリスの公式チャート集計に史上初めて組み込まれた作品となったことです。さらに、その集計結果により、本作はイギリスで初めてチャート1位を獲得したNFTアルバムという歴史的な快挙を成し遂げました。

物理的なセールスにおいても好調で、イギリスとフランスそれぞれで10万枚以上の売り上げを記録しています。この実績に基づき、イギリスでは英国レコード産業協会（BPI）からゴールド認定を、フランスではフランス音楽著作権協会（SNEP）からプラチナ認定を受けました。

収録曲

本作からは複数の楽曲がシングルとして先行リリースされています。

ウォント・スタンド・ダウン (Won't Stand Down)
コンプライアンス (Compliance)
ウィル・オブ・ザ・ピープル (Will of the People)
キル・オア・ビー・キルド (Kill or Be Killed)
* ユー・メイク・ミー・フィール・ライク・イッツ・ハロウィーン (You Make Me Feel Like It's Halloween)

これらのシングル群は、アルバムが持つ多様なサウンドの一端を示しており、ファンや批評家から広く注目を集めました。

『ウィル・オブ・ザ・ピープル』は、ミューズの音楽性の幅広さと進化を示す集大成的な作品であり、商業的成功に加え、NFTといった新しい技術を取り入れた革新的な試みにおいても、現代の音楽シーンに一石を投じたアルバムと言えるでしょう。

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