ウィル・グリッグスピー

ウィル・グリッグスピーは、1970年3月19日にアメリカ合衆国ミネソタ州セントポールで生まれた元プロボクサーです。そのキャリアの大部分を軽量級、特にライトフライ級で過ごし、国際ボクシング連盟（IBF）の世界王座を二度にわたって獲得した実力者として名を残しています。

彼のプロキャリアは1988年11月23日に始まりました。デビュー戦を3回TKO勝ちで飾り、幸先の良いスタートを切ります。しかし、キャリア初期の1989年2月24日、後にIBF世界ライトフライ級王者となるマイケル・カルバハルと対戦。ソウルオリンピック銀メダリストとしてプロ入りした強敵に対し、最終ラウンドまで善戦するもダウンを奪われ、1-2の僅差判定でプロ初黒星を喫しました。この一戦は、グリッグスピーにとって軽量級におけるライバルとの最初の対戦となりました。

その後、連勝街道を歩んだグリッグスピーは、1996年10月10日、ヘスス・ロペスとのUSBA全米フライ級王座決定戦に臨み、12回判定勝ちで国内タイトルを獲得しました。翌年10月4日には、同じ相手であるヘスス・ロペスとの再戦を制し、その実力を証明します。さらに1998年2月13日には、ジャビア・シントロンを相手にUSBA王座の初防衛に成功しました。

1998年12月18日、グリッグスピーは遂に世界王座挑戦の機会を得ます。空位となっていたIBF世界ライトフライ級王座をかけ、元IBF世界ミニマム級王者のラタナポン・ソーウォラピンと対戦。ミニマム級で長らく絶対王者として君臨していたラタナポン有利の声が多かったこの一戦でしたが、グリッグスピーは巧みな試合運びで強打の相手を封じ込め、118-110、118-111、116-112という大差の判定勝ちを収めました。これにより、ラタナポンの二階級制覇を阻止すると同時に、自身初のIBF世界王座獲得を成し遂げました。

世界王者となったグリッグスピーは、1999年3月6日にカルメロ・カセレスを相手に初防衛戦を行い、12回大差判定で勝利し王座を守りました。しかし、同年10月2日、当時無敗のままミニマム級世界統一王者から階級を上げてきたリカルド・ロペスと対戦。伝説的な強豪を前に、グリッグスピーは判定負けを喫し、王座から陥落しました。

キャリアの転換期は2000年7月22日に訪れます。WBO世界ライトフライ級王者ネルソン・ディーバに挑戦し、僅差の判定で勝利を収め、二階級制覇を達成したかに見えました。しかし、試合後の薬物検査でマリファナの陽性反応が検出されたため、この勝利は取り消され無効試合となり、王座獲得も認められませんでした。この一件により、グリッグスピーはWBOから1年間の出場停止処分を受けることとなります。

長期のブランクを経て、2002年6月8日にリングに復帰し、判定勝ちを収めます。しかし、その後は怪我に見舞われ、2003年は一度も試合を行えませんでした。再び復活を期したグリッグスピーは、2004年11月27日、世界ランカーのルーベン・コントレラスに初回TKO勝ちで勝利し、再び世界の舞台への足がかりを掴みました。

そして2005年5月14日、グリッグスピーは再びIBF世界ライトフライ級王座に挑みます。王者ホセ・ビクトル・ブルゴスを相手に、12回判定勝ちを収め、約6年ぶりに世界王座への返り咲きを果たしました。

二度目の王者生活は長く続きませんでした。2006年1月7日、ウリセス・ソリスとの初防衛戦に判定負けを喫し、王座から陥落します。再起をかけたソリスとの再戦が2007年1月25日に行われますが、劣勢は覆せず、8回終了時に棄権。この試合を最後に、ウィル・グリッグスピーは現役を引退しました。

二度にわたるIBF世界ライトフライ級王座獲得、マイケル・カルバハルやリカルド・ロペスといった時代を代表する強豪との対戦、そして薬物問題による挫折からの復活劇など、ウィル・グリッグスピーのキャリアは波乱に満ちたものでしたが、その不屈の精神は多くのボクシングファンに記憶されています。

もう一度検索