ウィンチェルシー

イングランド南東部、歴史的なカウンティであるサセックス地方に位置するウィンチェルシーは、非都市カウンティであるイースト・サセックスの小さな町です。自然豊かなハイ・ウィールドと広大なロムニー・マーシュに挟まれたこの町は、ライの南西約3.2キロメートル、ヘイスティングスの北東約11.2キロメートルという場所にあります。しばしばイングランドで最も小さな町の一つとして挙げられます。ウィンチェルシーは、かつて海の浸食によって失われた同名の古い町、通称「オールド・ウィンチェルシー」の後継として、1288年に計画的に築かれた中世の町の上に成り立っています。現在はイックルシャム行政教区の一部となっています。

オールド・ウィンチェルシーの繁栄と終焉

オールド・ウィンチェルシーは、ブリード川、ロザー川、ティリンガム川の河口が集まる広大な礫質の高台に位置し、「キャンバー」と呼ばれる船の停泊に適した場所を備えていました。文献には1130年に「Winceleseia」、1321年に「Old Wynchchelse」としてその名が記録されています。

1066年のノルマン・コンクェスト以降、オールド・ウィンチェルシーはイングランドと大陸を結ぶ海峡横断貿易、特にロンドンへの貨物を集積する拠点（アントルポ）として、また重要な海軍基地として大きな役割を果たしました。13世紀には、フランスのガスコーニュ地方からのワイン貿易で特に繁栄を極めました。当時の町は、およそ700軒の家屋、50軒もの宿や酒場が立ち並び、推定で3000人から5000人の人々が暮らす活気あふれる場所だったと考えられています。

しかし、オールド・ウィンチェルシーは自然の猛威に晒されました。1280年以前から度重なる浸水被害に見舞われ、町の多くが破壊されていきます。そして、1287年の大規模な洪水によって、町は完全に水没し、その姿を消しました。現在、その場所はキャンバー・サンズと呼ばれる砂浜に覆われているとされています。

新しい町の誕生と歴史

失われたオールド・ウィンチェルシーに代わる新しい町として、現在のウィンチェルシーが建設されました。旧市街の住民は、1292年頃にかけて現在の場所に移り住みました。これは、1281年に国王エドワード1世の命によって、新たな場所に計画的な町を建設することが決定されたためです。記録によれば、その計画の立案者はヘンリー・ル・ウェールズとトーマス・アラルドでした。この新しい町は、オールド・ウィンチェルシーが持っていた称号を引き継ぎ、ライや他の主要港町と共にシンク・ポーツの加盟都市としての地位を維持しました。

新しい町にはブリード川に面した潮汐港が設けられ、14世紀半ばまで活況を呈しました。しかしその後、歴史の荒波に揉まれます。15世紀までの百年戦争中には、フランスやスペインからの度重なる襲撃に見舞われ、さらにペスト（黒死病）の流行にも苦しめられました。1350年には近海でウィンチェルシーの海戦が発生し、1360年には、4年前にポワティエの戦いで捕虜となったフランス王ジャン2世を奪還しようとしたフランス遠征軍の手により、町は略奪され焼き払われるという甚大な被害を受けました。かつての繁栄は徐々に失われ、1520年代までには町の規模は縮小しました。そして、港の沈泥化が進行し、船の出入りが困難になったことが、商業活動を停止させる決定打となりました。

16世紀初頭には、ヘンリー8世の命によりキャンバー城が構築されました。これは、ウィンチェルシーとライの中間に位置するキャンバーへの主要な進入口を警備する目的で建てられたものです。城の建設には、近くのグレーフライアーズにあるフランシスコ修道院が解体された際の石材が多く使用されたと考えられています。

現在のウィンチェルシーの姿

広大な湿地帯に囲まれた丘の上に位置する現在のウィンチェルシーは、中世に計画された町の姿を今なお色濃く留めています。碁盤の目のような当初の町並みの配置や、中世に掘られた大規模なワインセラーが数多く残されているのが特徴です。これは、ウィンチェルシーがかつてギュイエンヌ地方やガスコーニュ地方とのワイン貿易で重要な拠点であったことを物語っています。これらの広大なワインセラーは、現在も一般公開される機会があり、見学することが可能です。

また、かつての町の防衛施設の一部も残されています。4か所あった市門のうち、ストランド・ゲートやパイプウェル・ゲート（フェリー・ゲートとも呼ばれる）など3基が現存しています。ニュー・ゲートは現在の町の中心部から約800メートルほど離れた場所にあり、これはウィンチェルシー新市街が当初どれほど広大な規模で計画されていたかを示す証拠となっています。殉教者トマス・ベケットに捧げられた教区教会（聖トマス教会）も重要な歴史的建造物です。かつては聖レオナルド教会もありましたが、その場所には後に風車（聖レオナルドの風車）が建てられ、1987年の大暴風で吹き倒されました。

聖トマス教会の墓地の向かい側には、ウィンチェルシーで最も古い建物の一つであるコートホール（裁判所）があります。この建物は、かつて1階が留置場として使われ、2階が裁判所でした。現在は博物館として利用されており、ウィンチェルシーや自治体の歴史に関する多くの資料が展示されています。近くには町の井戸があり、これは丘の上に水を供給するため1851年に掘られたもので、深さは約40メートルにも及びます。

ウィンチェルシーはイングランド南岸を結ぶ主要道路（A259号線）沿いに位置しています。ストランド・ヒルと呼ばれる丘の麓には、かつて町の救貧院（ワークハウス）としても機能したストランド・ハウスがあります。

交通手段としては、町の中心部から北へ約1.2キロメートル離れたブリード渓谷にウィンチェルシー駅があります。この駅には、ケントのアシュフォードとブライトンを結ぶ「マーシュリンク線」の列車が約2時間おきに停車します。

ウィンチェルシーは、海に消えた古都の記憶と、計画都市として栄え、そして衰退した新しい町の歴史が層をなす、静かで歴史深い場所です。中世の面影を残す町並みや地下のワインセラーは、訪れる人々に往時の繁栄と困難の物語を伝えています。

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