ウィンチルシー伯爵

ウィンチルシー伯爵位の歴史：複雑な相続と輝かしい一族

ウィンチルシー伯爵（Earl of Winchilsea）は、イングランド貴族を代表する由緒ある伯爵位です。その歴史は、17世紀初頭、ケント州の裕福な地主であり、庶民院議員も務めたモイル・フィンチ（1551-1614）とその妻エリザベス（1556-1634）に遡ります。

フィンチ家は、12世紀イングランド国王ヘンリー1世の宮廷に仕えたヘンリー・フィッツハーバートの子孫であると伝えられています。14世紀中頃、フィンチ家は女子相続人の婚姻を通じてその名を受け継ぎました。

モイル・フィンチは、ウェインマス、ケント、ウィンチルシーの選挙区から庶民院議員に選出されるなど、政治的に活躍しました。1611年には準男爵に叙せられ、社会的地位を確固たるものとしました。モイルの死後、妻エリザベスは1623年にメイドストン子爵夫人、1628年にウィンチルシー伯爵夫人に叙任されました。これらの爵位は、エリザベスの男系男子に継承されるものでした。

しかし、モイルとエリザベスの間には、長男セオフィラス（1573-1619頃）が早くに亡くなったため、爵位は次男トマス（1578-1639）が継承することとなります。トマスは、1634年に母エリザベスの死によって2代ウィンチルシー伯爵となりました。

その後、ウィンチルシー伯爵位は、3代伯ヘニッジ（1627頃-1689）、4代伯チャールズ（1672-1712）、5代伯ヘニッジ（1657-1726）、6代伯ジョン（1683-1729）と、兄から弟へと受け継がれていきます。しかし、6代伯の死により、モイル・フィンチからの男系男子の相続は途絶えました。

ここで重要なのが、モイル・フィンチの弟ヘニッジ・フィンチ（1580-1631）の存在です。彼の長男、ヘニッジ・フィンチ（1620-1682）は、王政復古後に準男爵に叙せられ、庶民院議員を務めた後、1673/74年にフィンチ男爵、1681年にはノッティンガム伯爵に叙任されました。彼の死後、爵位は息子のダニエル（1647-1730）が継承し、2代ノッティンガム伯爵となります。ダニエルは、トーリー党の政治家として活躍し、1729年には、はとこにあたる6代ウィンチルシー伯の死後、ウィンチルシー伯爵位を継承しました。

この時より、ウィンチルシー伯爵位とノッティンガム伯爵位は、同一人物が継承することとなり、現在に至るまで、これらの爵位は統合された形で存在しています。

その後も、ウィンチルシーおよびノッティンガム伯爵家は、イギリス政治に貢献する人物を輩出し続けました。例えば、8代伯ダニエル（1709頃-1769）は海軍大臣や枢密院議長を務めました。しかし、8代伯には男子がなかったため、爵位は甥や従兄弟甥へと継承されていきました。

さらに、8代伯の弟エドワードは、母方のハットン子爵家の財産を相続し、二重姓フィンチ＝ハットンを名乗るようになりました。そのため、現在のウィンチルシー伯爵は、フィンチ＝ハットンを名乗っています。

2019年現在、17代ウィンチルシー伯爵、12代ノッティンガム伯爵であるダニエル・ジェイムズ・ハットフィールド・フィンチ＝ハットンが当主であり、その長男トビアス・ジョシュア・ストーモント・フィンチ＝ハットンが法定推定相続人です。ウィンチルシー伯爵家は、複雑な相続の歴史を経て現在も存続し、その歴史はイギリス貴族の歴史を語る上で重要な要素となっています。

現当主が保有する爵位・準男爵位

第17代ウィンチルシー伯爵
第12代ノッティンガム伯爵
第17代メイドストン子爵
第12代フィンチ男爵
第18代（イーストウェルの）準男爵
第12代（ローンストンの）準男爵

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