ウインド・オーケストラ

ウインドオーケストラとは

ウインドオーケストラは、吹奏楽の一つの形態として知られています。しかし、「ウインドオーケストラ」という名称は、その実態を正確に表すものとして、必ずしも明確に定義されているわけではありません。この名称は、非常に広い範囲で曖昧に使われることが多く、その実態は多岐にわたります。

多様な形態

例えば、100人以上もの大規模な編成で活動する団体がある一方で、東京佼成ウインドオーケストラやOsaka Shion Wind Orchestraのように、プロフェッショナルな吹奏楽団でありながら、ウインドアンサンブルのスタイルで演奏を行う団体も多く存在します。
また、アメリカン・ウィンド・シンフォニー・オーケストラのように、管弦楽団の管楽器や打楽器セクションに相当する編成を指す場合もあります。このように、ウインドオーケストラという言葉が指す範囲は非常に広く、その形態は様々です。

各国での表現

ウインドオーケストラに対応する言葉は、英語だけでなく、他の言語にも存在します。例えば、ドイツ語では"blasorchester"、フランス語では"orchestre d'harmonie"や"orchestre à vent"、イタリア語では"orchestra di fiati"といった表現が用いられます。これらの言葉は、それぞれの言語圏において、ウインドオーケストラと同様の概念を表すものとして理解されています。

編成の歴史

木管楽器を多く含む吹奏楽の編成は、従来の金管バンド（ブラスバンド）と比較して、より緻密で多彩な音色を実現するために、20世紀に入ってから編成されるようになりました。この編成は、音楽表現の幅を広げる上で重要な役割を果たしました。

現代に見られるようなクラリネットを主体とした楽団編成のルーツは、1942年にアメリカのミシガン大学でウィリアム・レヴェッリが始めた「小さな木管楽器アンサンブル」(small wood-wind ensemble)に遡ります。彼はウインドオーケストラを室内楽の形態で活発化させようと試みました。この試みが、その後の吹奏楽の発展に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

クラリネットの役割

現代の吹奏楽演奏において、クラリネットはオーケストラにおけるヴァイオリンに相当する重要な役割を担っています。そのため、クラリネット奏者には、高音域や速いパッセージ（経過楽句）を正確に演奏する高度な技術が求められます。クラリネットは、吹奏楽において、旋律を奏でるだけでなく、音楽全体の色彩を豊かにする上でも欠かせない楽器となっています。

ウインドオーケストラは、その多様な形態と、木管楽器を中心とした緻密な音楽表現が特徴です。その歴史は、20世紀初頭から始まり、現在に至るまで、吹奏楽の世界において重要な位置を占めています。

参考文献

保科, 洋、小澤, 俊朗、渡辺, 秀之ほか 編『JBCバンドスタディ』YAMAHA、2005年6月。
PHP研究所 編『世界の「楽器」絵事典 歴史から、音の出るしくみまで』PHP研究所、2007年4月。ISBN 978-4-569-68676-9。
佐伯茂樹『管楽器おもしろ雑学事典』ヤマハミュージックメディア、2007年11月。ISBN 978-4-636-81715-7。
秋山紀夫『吹奏楽の歴史』ミュージックエイト、2013年12月。ISBN 978-4-871-64313-9。
* 中橋愛生「吹奏楽特有の言葉の意味を知る」『バンドジャーナル』、音楽之友社、2016年8月、33-39頁。

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