ウェイクフィールドの戦い

ウェイクフィールドの戦い：ヨーク公リチャードの悲劇と薔薇戦争の転換点

1460年12月30日、イングランドのウェスト・ヨークシャー地方ウェイクフィールドで、薔薇戦争における重要な戦い、「ウェイクフィールドの戦い」が繰り広げられました。この戦いは、ヘンリー6世の王妃マーガレット・オブ・アンジューが率いるランカスター派と、王位を主張するヨーク公リチャードを中心とするヨーク派との間で勃発しました。

戦いの背景：王位継承をめぐる対立

ヨーク公リチャードは、ヘンリー6世から、ヘンリー6世の死後、自身とその子孫に王位を継承させるという約束を取り付けていました。しかし、王妃マーガレットは、息子のエドワード王太子（当時6歳）を王位に就けたいと考えており、この約束に強く反発していました。ランカスター派の兵力がヨーク派を上回る状況下で、マーガレット王妃はヨーク公に対抗するため、北へと進軍を開始しました。

戦闘の様子：シェイクスピアの描く悲劇と史実

ウェイクフィールドの戦いについては、シェイクスピアの戯曲『ヘンリー六世 第3部』において、ヨーク公の次男であるラットランド伯エドムンドの「殺害」が劇的に描かれています。しかし、実際の戦闘の詳細は不明な点が多く、正確な日付や戦場の場所も特定されていません。有力な場所としては、サンダル城の北、ウェイクフィールド・グリーン一帯が挙げられます。ヨーク公が戦死したとされる場所には記念碑が建てられましたが、後の内戦で破壊されました。

史実では、マーガレット王妃は戦場にはおらず、サマセット公とノーサンバランド伯が指揮を執っていたと考えられています。シェイクスピアの戯曲では、エドムンドは子供として描かれ、クリフォード卿による虐殺や、マーガレット王妃によるヨーク公への拷問などが描かれていますが、実際にはエドムンドは17歳であり、戦闘に参加できる年齢でした。

ヨーク公の敗北は、増援部隊の到着を待たずにサンダル城から出撃したことや、自軍の力を過信したことなどが原因として考えられます。また、ヨーク公がランカスター派に寝返ったネヴィル卿に欺かれた可能性も指摘されています。

戦後、ヨーク公、エドムンド、ソールズベリー伯の首は晒し首にされ、ヨークの城門に飾られました。ヨーク公の首には紙の王冠が被せられ、「ヨーク公にヨークの街を見下ろさせてやれ」という札が掲げられたと言われています。

戦いの影響：エドワード4世の台頭

ヨーク派の指導者であったヨーク公の死は、ヨーク派にとって大きな痛手となりました。しかし、ヨーク公には長男エドワードがおり、彼は優れた軍事指揮官、政治家としての才能を発揮し、後にイングランド王エドワード4世として即位することになります。ウェイクフィールドの戦いは、ヨーク派の苦難と、その後のエドワード4世による王位掌握へと繋がる、重要な転換点となりました。

ウェイクフィールドの戦いは、単なる局地的な戦闘にとどまらず、薔薇戦争全体の流れを大きく左右する出来事となりました。ヨーク公の死は、ヨーク派に一時的な混乱をもたらしたものの、エドワード4世の登場によって、ヨーク朝の成立へと繋がっていきました。この戦いは、イングランドの歴史における重要な一幕として、語り継がれています。

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