マーガレット・オブ・アンジュー

マーガレット・オブ・アンジュー：薔薇戦争を彩った強き王妃

マーガレット・オブ・1429年-1482年'>[アンジュー]は、15世紀イングランドを揺るがした薔薇戦争において、ランカスター派を率いた重要な人物です。フランス、ロレーヌ公家の出身である彼女は、アンジュー公ルネとロレーヌ女公イザベルの娘として生まれ、百年戦争終結の和平交渉の一環として、1445年、ヘンリー6世と結婚しました。

政略結婚と宮廷政治

この結婚は、サフォーク伯やヘンリー・ボーフォート枢機卿らによる政治的駆け引きの結果でした。トゥール条約締結によるアンジューとメーヌのフランスへの割譲はイングランド国内の反感を買い、後の薔薇戦争の一因となります。マーガレットは、和平派の中心人物サフォーク公と協力し、強硬派のグロスター公らを押さえ込み、宮廷での影響力を強めていきます。しかし、この専制的な手法は、多くの貴族の反感を買い、ヨーク公リチャードを中心に反発が強まりました。

百年戦争再開とノルマンディーの喪失は、イングランド国内の混乱をさらに激化させました。サフォーク公失脚後、サマセット公が寵臣となりますが、政治状況は改善せず、ジャック・ケイドの反乱など社会不安が続きました。ヘンリー6世の精神不安定も重なり、ヨーク公は政治の実権を握ります。マーガレットは摂政就任を要求しますが拒否され、ヨーク派との対立は避けられなくなります。

薔薇戦争：激闘と敗北

1455年、ヨーク派が反撃を開始、第一次セント・オールバンズの戦いが勃発します。この後、マーガレットはヘンリー6世に代わってランカスター派を率い、サマセット公、ノーサンバランド伯、ペンブルック伯など有力貴族と共にヨーク派と戦います。彼女は、幾多の戦闘を指揮し、ウェイクフィールドの戦いでヨーク公を討ち取るなど、その軍事手腕を見せつけました。しかし、その残忍な処罰は後世まで語り継がれ、シェイクスピア作品にも描かれることとなります。

モーティマーズ・クロスの戦いでの敗北後も、彼女は抵抗を続けます。しかし、タウトンの戦いでの大敗の後、スコットランド、そしてフランスへと逃亡を余儀なくされます。フランス王ルイ11世からの支援を得てイングランドに戻りますが、再び敗北を喫し、再びフランスへと亡命します。

晩年と評価

1470年、ウォリック伯の反乱によりヘンリー6世が一時的に復位しますが、この政権は脆く、エドワード4世の帰国とウォリック伯の敗死によって再びヨーク派が優勢となります。テュークスベリーの戦いで息子エドワードを失い、ヘンリー6世も殺害されるなど、ランカスター派は壊滅的な打撃を受けました。マーガレットは捕らえられましたが、身代金の支払いの後にフランスへと帰国します。その後、貧困の中で過ごした彼女は、1482年にアンジューで亡くなりました。

マーガレットは、夫の代わりに戦争を指揮した勇敢な女性として、また、手段を選ばない冷酷な政治家としても知られています。一方で、ケンブリッジ大学クイーンズ・カレッジの創設や、織物工業の振興など、教育や経済にも貢献した側面も持ち合わせていました。彼女の人生は、薔薇戦争という激動の時代を生き抜いた女性の複雑な姿を私たちに示しています。 彼女の積極的な性格と冷酷な側面は、現在でも議論の的となっていますが、薔薇戦争という激動の時代における彼女の役割は、歴史に大きな足跡を残しました。

もう一度検索