ヨーク朝

ヨーク朝：薔薇戦争とイングランド王国の変遷

15世紀のイングランドは、プランタジネット朝の後期にあたり、王位継承を巡る争いが激化していました。その争いは、プランタジネット家の中でも特に勢力の強かったヨーク家とランカスター家による薔薇戦争として知られています。ヨーク家は、エドワード3世の五男エドマンド・オブ・ラングリーを祖とし、その子孫は、代々ヨーク公の称号を受け継いできました。一方、ランカスター家は、エドワード3世の三男ジョン・オブ・ゴーントを祖とする家系です。

ヨーク家の隆盛と薔薇戦争の勃発

ヨーク家のリチャード・プランタジネットは、マーチ伯領などの広大な領地と王位継承権を相続し、大きな影響力を持つようになりました。しかし、当時、国王であったヘンリー6世の弱体な統治と、ランカスター派の有力者サマセット公との対立により、政治的緊張は高まっていきました。ヘンリー6世の精神不安定も王権の弱体化を招き、ヨーク家の台頭を許すことになりました。

1455年、ヨーク家は、ランカスター派と全面衝突し、薔薇戦争が勃発します。戦争は長期にわたり、両家が激しい攻防を繰り広げました。初期の戦闘では、ヨーク公リチャードが幾度か優勢に立ちますが、1460年のウェイクフィールドの戦いで戦死します。しかし、彼の長男エドワードは、ウォリック伯リチャード・ネヴィルの支援を受け、反撃に出ます。ウォリック伯は「キングメーカー」と呼ばれ、ヨーク家とランカスター家の勢力均衡を操る重要な人物でした。

ヨーク朝の成立とエドワード4世

1461年、エドワードはタウトンの戦いで勝利し、エドワード4世として即位し、ヨーク朝が成立します。彼の治世は、ランカスター派の残党の反乱鎮圧や、ウォリック伯との対立など、多くの困難に直面しました。特に、ウォリック伯との関係悪化は、エドワード4世を追放し、ヘンリー6世を復位させる事態にまで発展しました。しかし、エドワード4世は反撃に成功し、ウォリック伯を討ち取り、ヘンリー6世を殺害しました。

エドワード5世とリチャード3世

1483年、エドワード4世が死去すると、幼少のエドワード5世が王位を継承しますが、彼の叔父であるグロスター公リチャード（後のリチャード3世）は、エドワード5世と弟をロンドン塔に幽閉、王位を簒奪します。リチャード3世は、エドワード4世の結婚の無効を主張し、王位継承権を主張しました。リチャード3世の統治は短命に終わり、1485年のボズワースの戦いでリッチモンド伯ヘンリー・テューダーに敗れ戦死します。この戦いは、薔薇戦争の終結、そしてヨーク朝の滅亡を意味しました。

ヨーク朝の終焉とテューダー朝の始まり

ボズワースの戦いの勝利によって、ヘンリー・テューダーはヘンリー7世として即位し、テューダー朝を開きました。彼は、ヨーク家のエリザベス・オブ・ヨークと結婚し、ヨーク家とランカスター家の対立を解消することに努めました。ヨーク家の血筋は、テューダー朝を通じて継承され、イングランドの歴史に大きな影響を与え続けました。 ヨーク朝は、短い期間でしたが、イングランドの歴史に大きな足跡を残した王朝でした。その興亡は、王位継承争い、勢力争い、そして個人の野望が複雑に絡み合った結果であり、中世イングランドの激動の時代を象徴する出来事と言えます。

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