ウェストミンスター大聖堂

ウェストミンスター大聖堂は、イギリス・ロンドン中心部のウェストミンスター地区に位置する、威容を誇るカトリック教会です。イングランドとウェールズにおけるカトリック教会の中心地として、大司教区の司教座聖堂としての役割を担い、その規模はイギリス最大を誇ります。

この大聖堂の歴史は、19世紀後半、ローマ教皇庁とイギリス国教会の関係改善という歴史的背景と深く関わっています。カトリック教会の復興、司教の着任を機に、初代ウェストミンスター大司教ニコラス・ワイズマンの功績を称え、大聖堂建設の構想が持ち上がりました。各地からの寄付金が集まり、建設へ向けた動きが活発化していきました。

しかしながら、建設への道のりは平坦ではありませんでした。1884年に用地取得後、二度にわたる計画頓挫を経験しています。設計者の変更や、様々な要因が重なり、着工は遅れていきました。

最終的に、第三代大司教ハーバート・ヴォーン枢機卿の時代、1895年にジョン・フランシス・ベントリーによる設計で建設が開始されました。ビザンティン様式を基調とした壮麗な建築は、1903年に完成を迎えました。しかし、予算不足のため内部装飾は未完のままとなり、現在に至っています。そのため、教会法の規定により、献堂式典は1910年までずれ込むこととなりました。

完成から今日まで、ウェストミンスター大聖堂は数々の歴史的出来事の舞台となっています。1982年には教皇ヨハネ・パウロ2世がミサを執り行った他、1995年には女王エリザベス2世が公式訪問し、典礼に参加しました。現役君主によるカトリック教会への公式訪問は、ヘンリー8世以来のことだったとされ、歴史的な出来事として広く認識されています。

ウェストミンスター大聖堂の建築様式は、ビザンティン様式を基調としています。設計を手掛けたジョン・フランシス・ベントリーはビザンティン様式に精通した建築家として知られており、その才能が存分に発揮された、特徴的な外観が魅力です。約90メートルもの高さを持つ聖エドワードタワーは、遠くからでもその存在感を示しています。前面のアーチと柱の組み合わせも、見事な美しさを誇ります。

内部空間も非常に広大で、身廊はイングランド随一の広さを誇ります。祭壇は身廊から1.5メートル高い位置に設置されており、どの席からでも祭壇上の装飾を美しく眺めることができます。大理石製の飾り天蓋と、その下に位置する祭壇は、モザイクで美しく飾られ、ライトアップによってさらに輝きを増しています。祭壇上には長さ10メートルにも及ぶイエス・キリストの大十字架が掲げられており、キリストの姿と聖母マリアの姿が、それぞれ正面と裏面に描かれています。

大理石の大司教座は、ローマのサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂の司教座を模して作られており、その荘厳さは見る者を圧倒します。内部の至るところに施されたモザイク装飾は、この大聖堂の大きな見どころの一つであり、ビザンティン様式の華麗さを象徴するものです。

未完成部分を残したまま、歴史を刻み続けるウェストミンスター大聖堂は、建築史的にも宗教史的にも重要な存在であり、訪れる人々に深い感動を与え続ける、ロンドンの象徴的な建造物です。

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