ウェールズラグビー協会

ウェールズラグビー協会（WRU）は、ウェールズ国内におけるラグビーユニオン競技を管轄する最高機関であり、世界のラグビー統括団体であるワールドラグビーに加盟しています。ウェールズのラグビー発展において、設立当初から今日に至るまで中心的な役割を担ってきました。

歴史

協会の起源は、1875年9月に設立されたサウスウェールズフットボール連合にさかのぼります。これは、イングランド西部などの近隣地域における主要クラブとの対戦機会を設けることを目的としていました。その後、ウェールズ全土のラグビークラブを統合する動きが進み、1881年3月12日には、国内の11の主要クラブが集まり、ウェールズラグビーフットボール協会（WRFU）が正式に結成されました。

WRFU設立後、ウェールズ代表チームは急速に力をつけ、1893年にはホーム・ネーションズ・チャンピオンシップで初めてトリプルクラウン（イングランド、アイルランド、スコットランドに全勝して優勝すること）を達成します。この成功を契機に、ウェールズラグビーは最初の黄金時代を迎えます。特に顕著なのは、1907年3月から1910年1月にかけて、代表チームが国際試合で11連勝を記録したことです。さらに、1911年にはフランスが新たに加わって始まった最初のファイブ・ネイションズ・チャンピオンシップにおいて、ウェールズは全勝優勝を飾り、グランドスラムを達成しました。協会の正式名称は、1934年に現在のウェールズラグビー協会（WRU）へと変更されています。

第二次世界大戦後もウェールズの強さは健在で、1950年と1952年にもグランドスラムを達成しました。そして、1970年代には「第2黄金時代」と呼ばれる栄光の時代が到来します。この時期、ウェールズ代表は1971年、1976年、1978年の3度にわたってグランドスラムを達成したほか、1971年、1976年、1977年、1978年、1979年には5度のトリプルクラウンを獲得するなど、国際舞台で圧倒的な成績を残しました。協会の設立100周年は、1980-81シーズンに記念行事とともに祝われました。

1995年にはラグビーユニオンのプロ化が宣言され、協会もこの新たな時代に対応を迫られました。1999年6月には、ラグビーワールドカップの開催に合わせて、それまでのカーディフ・アームズ・パーク内のウェールズ国立競技場に代わる新たな本拠地として、近代的なミレニアム・スタジアム（現在のプリンシパリティ・スタジアム）が建設されました。個人の記録としては、ウェールズ代表のニール・ジェンキンスが2001年3月17日にテストマッチにおいてラグビーユニオン選手として史上初めて通算1,000得点を達成し、キャリア通算で87キャップ、1049得点という偉大な記録を残しました。

しかし、近年はウェールズ代表にとって厳しい時期が続いています。2024年にはテストマッチで12連敗を喫し、1暦年を通して国際試合で一度も勝利できないという、1937年以来87年ぶりの不振に陥りました。この連敗は2025年2月8日に行われたシックス・ネイションズの試合で14まで伸び、結果としてウェールズのワールドラグビーランキングは史上最低の12位まで転落しました。この状況を受け、協会は2月11日にウォーレン・ガットランドヘッドコーチとの間で双方合意による契約解除を発表しました。

協会に関する議論

ウェールズラグビー協会は、その象徴的な表現に関して、時折国民的な議論の対象となることがあります。協会の現在のロゴは、「プリンス・オブ・ウェールズの羽根」をモチーフとしていますが、この羽根がイングランド王室と深い関連があることから、ウェールズ独自の文化やアイデンティティをより反映したロゴに変更すべきだという意見が繰り返し表明されています。例えば、ウェールズ独立を支持する非政党組織であるYesCymruなどは、伝統的なウェールズの象徴であるネギや水仙、あるいはウェールズの伝説に登場する赤い竜を用いた代替ロゴ案を提唱しています。

また、ウェールズと南アフリカ共和国のテストマッチシリーズで争われるトロフィー「プリンス・ウィリアム・カップ」の名称も、創設時に論争を巻き起こしました。このカップは2007年に創設され、当時のプリンス・オブ・ウェールズであったウィリアム王子にちなんで命名されました。しかし、ウェールズ国内からは、同年10月に逝去したウェールズ代表の伝説的な選手レイ・グラヴェル氏の名を冠するべきだという声が多数上がり、請願活動が行われる事態となりました。

ウェールズラグビー協会は、その豊かな歴史と代表チームの活躍でウェールズ国民にとって重要な存在であり続けていますが、同時に国のアイデンティティや象徴を巡る議論の中心にも位置しています。

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