ウェールズ議会

ウェールズ議会（Senedd Cymru、英語: Welsh Parliament）は、イギリスの首都ロンドンにあるイギリス議会から権限を委譲された、ウェールズの立法府です。ウェールズ語で「セネッズ」と呼ばれるこの議会は、ウェールズの首都カーディフにある近代的な議事堂に置かれ、一院制の議会として機能しています。

この議会は、60人の議員によって構成されています。これらの議員は、Member of the Senedd（MS）またはAelod o'r Senedd（AS）と呼ばれ、ウェールズ国民の代表として活動しています。議員の任期は5年で、2011年以降この任期が適用されています。議員の選出方法には独特の仕組みが用いられており、小選挙区比例代表連用制（Additional Member System、AMS）が採用されています。この制度では、40人の議員がウェールズを地理的に区分された40の小選挙区から、多数決方式で選出されます。残りの20人の議員は、比例代表制のドント方式を用いて、5つの比例区から選出されます。この二種類の選挙方法を組み合わせることで、ウェールズ全土の多様な意見を反映した議会構成を目指しています。

ウェールズ議会の歴史は、1997年に実施された住民投票に遡ります。この住民投票の結果を受けて、1998年ウェールズ統治法が制定され、ウェールズ議会が正式に創設されました。しかし、当初は立法権限が限定されており、独自の法律を制定することはできませんでした。議会は、イギリス政府からの委任事項に基づいて活動する立場にありました。

ウェールズの自治権拡大に向けた大きな転換期が訪れたのは、2006年ウェールズ統治法の制定です。この法律によって、ウェールズ議会は制限付きではありますが、独自の立法権を獲得しました。これは、ウェールズにおける自治への大きな一歩となりました。しかし、真の飛躍は2011年3月3日に実施された住民投票によるものです。この住民投票で賛成多数を得たことにより、ウェールズの立法権はさらに強化されました。ウェールズ議会は、20の特定の領域において、連合王国議会やウェールズ大臣に助言を求めることなく、独自の法律を制定できるようになりました。

さらに2017年ウェールズ法では、ウェールズ議会の権限はさらに拡大され、議会自身の名称を変更する権限も付与されました。この権限行使の結果、3年間にわたる議論を経て、2020年5月6日、それまでの名称であった「National Assembly for Wales」（ウェールズ語: Cynulliad Cenedlaethol Cymru）から現在の「Senedd Cymru」へと改称されました。この改称は、ウェールズの自治意識の高まりと、議会自身のアイデンティティの確立を示す象徴的な出来事となりました。

ウェールズ議会は、ウェールズの住民の生活に直接影響を与える多くの政策決定に関与しています。保健、教育、経済開発など、幅広い分野において独自の政策を立案し、実行しています。近年、ウェールズにおける自治権の拡大は着実に進んでおり、ウェールズ議会はその中心的な役割を果たしています。ウェールズ独自の文化、言語、歴史を尊重し、発展させるための政策立案もウェールズ議会の重要な役割です。ウェールズ議会は、今後もウェールズの発展に重要な役割を果たしていくことが期待されています。

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