ウエストボール

ウエストボール（ウエストピッチ）について

ウエストボールは、日本の野球に特有の用語であり、英語では「waste pitch」と呼ばれます。この用語は、投手が打者を打ち取るために敢えてボール球を投げる行為を指しており、しばしば「捨て球」「遊び球」「釣り球」といった別名でも知られています。通常のピッチとは異なり、打者に対して明らかにボールになる投球を行うことで、次の投球の選択肢を増やす狙いがあります。

ウエストボールの語源である「waste」は本来「ウエイスト」と発音されますが、日本語では「ウエスト」と表記されるのが一般的です。これにより、日本の野球界では特有の風土が形成されています。

ウエストピッチの意義

ウエストピッチが行われるのは、特に投手に有利なカウント、例えば0ボール2ストライクの場合です。この状況では、投手はボール球を投げることで、打者の打撃リズムを乱し、次に投げるボールへの準備を妨げようとします。具体的には、外角にボールになるスライダーや、打者のバットが届かない外角に緩いカーブを投げることで、打者の注意を外に向ける戦略が取られます。また、内角に速球を投げて打者の構えを崩すことも狙われます。

選手によってウエストピッチに対する見解は分かれています。例えば、元サイ・ヤング賞受賞投手のクリス・カーペンターは、0ボール2ストライクの状況でヒットを打たれた場合を「悪い投球」と捉え、ウエストピッチの重要性を強調しています。一方、ザック・グレインキーは、あまりにも明白なボール球ではなく、低めのブレーキングボールや高めへの速球で打者を攻める方が効果的だと語ります。

別の著名な選手、ティム・リンスカムは、0ボール2ストライクからカーブを投げる布石として、高めの速球を好まない考えを示し、「三振を狙ってチェンジアップを投げたい」と主張しています。このように、ウエストボールに対する考え方は多岐にわたり、それぞれの選手が自身のスタイルを持っています。

日本プロ野球におけるウエストボール

日本プロ野球の世界でも「ウエストボール」という明確な用語が存在しないものの、0-2のカウントからストライクを投じることがチームとして避けられた事例があります。元読売ジャイアンツの江川卓は、引退後の対談で、0-2のカウントでヒットを打たれると罰金が科せられたため、捕手からの頼みで仕方なくボール球を投げていたことを明かしました。このように、ゲームの中では戦略的な選択が選手たちの間で重要視されているのです。

ウエストボールは、日本の野球文化において独特の戦略や心理が交錯する面白い一面を持っています。投手が打者を意図的に出し抜くために使用されるこのテクニックは、野球の戦略性の高さを物語る重要な要素のひとつと言えるでしょう。

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