ウォルター・サヴェージ・ランダー

ウォルター・サヴェージ・ランダー：激動の人生と不朽の文学

ウォルター・サヴェージ・ランダー (1775年-1864年) は、英国を代表する作家にして詩人、そして情熱的な活動家でした。彼の名は、散文作品『空想談話 (Imaginary Conversations)』と抒情詩『ローズ・エールマー (Rose Aylmer)』によって広く知られていますが、その才能は同時代の批評家からの高い評価を得ながらも、必ずしも大衆的な人気を博したわけではありませんでした。彼の作品と同様に、奔放で激しい性格、そして自由主義・共和主義への揺るぎない信念も、ランダーという人物を特徴づける重要な要素でした。

多彩な創作活動

89年に及ぶランダーの生涯は、創作活動に満ち溢れていました。散文、抒情詩、政治的な著作、そしてラテン語の詩と、その創作ジャンルは多岐に渡ります。彼の散文と詩は多くの称賛を集めましたが、批評家の評価は様々で、「詩人の中の詩人」や「比類なき英語詩の詠み人」など、賛辞は枚挙に暇がありません。ウィリアム・バトラー・イェイツ、エズラ・パウンド、ロバート・フロストといった後の世代の巨匠詩人たちにも影響を与えたとされるランダーの詩は、まさに時代を超越した魅力を秘めていると言えるでしょう。

代表的な散文作品である『空想談話』は、古代ギリシャの哲学者からランダーと同時代の作家まで、歴史上の人物を登場させて哲学、政治、恋愛などをテーマにした対話を展開するという、独創的な試みです。しかし、作劇技法の習熟が不足していたため、全体の構成には改善の余地が残されています。

彼の詩は、感受性豊かで美しい表現に満ち溢れています。恋愛詩では、アイオン、アイアンシー、ローズ・エールマー、ローズ・ペインターといった理想の女性像が、ロマンティックな情景とともに描かれ、家族を題材にした詩もまた、深い情感を湛えています。

政治的な活動もランダーの生涯において重要な位置を占めていました。反ピット派の政治運動からイタリア統一運動まで、彼が関心を抱いた様々な時事問題について、新聞への寄稿を通じて自身の考えを表明しました。また、痛烈な皮肉とユーモアを込めたエピグラムの名手としても知られ、政治家やその他の人々を風刺する作品を多数残しています。

300編を超えるラテン語の詩や政治論説、エッセイも存在しますが、これらは英語の作品と比べると広く知られていません。彼は、ラテン語を好んで用いることで、タブーとされた内容や批判的な意見を表現する隠れ蓑として利用していた可能性もあります。

波乱に満ちた生涯

ランダーの生涯は、強情な性格と短気な気性、そして権威への反抗という、彼自身の性質がもたらした数々のトラブルに彩られていました。ラグビー校やオックスフォード大学から除名されたり、家族と絶縁状態になったり、また、ピット派の政治家やその他の権力者たちとの確執は、彼の人生を常に揺るがす大きな要因となりました。

名誉毀損で訴えられたり、隣人との間の法的紛争に巻き込まれたり、また、結婚生活もうまくいかず、何度も国外へ逃れるなど、彼の波乱万丈な人生は、まさに小説の主人公のようなドラマチックなものでした。

しかし、ランダーは「最高に親切で優しい人物」としても知られており、その寛大さやユーモアのセンスで多くの人々を魅了しました。彼の作品には、情熱的な同情心や、悪への痛烈な批判が表現され、子供や動物、花への優しい愛情もあふれています。

青年期と初期の創作活動

ウォリックシャーで外科医の息子として生まれたランダーは、裕福な家庭環境で育ちました。ホイッグ党を支持する一家に生まれ、強い文学的伝統の中で育った彼は、ノールの学校、ラグビー校を経て、オックスフォード大学トリニティ・カレッジに入学しますが、共和主義思想への傾倒や反抗的な行動から、大学を中退します。

その後、ウェールズでナンシー・エヴァンズと出会い、彼女を「アイオン」と名づけて多くの恋愛詩を創作しました。1795年には詩集『ウォルター・サヴェージ・ランダー詩集』を発表、さらに、ウィリアム・ピット首相を痛烈に批判した風刺詩『道徳書簡』も発表しました。

ウェールズで過ごした時期には、エールマー卿の姉妹ローズと親交を深め、彼女の死を悼んで書かれた『ローズ・エールマー』は、彼の代表作の一つとなりました。また、ゴシック小説の影響を受けた叙事詩『ゲビア』を発表し、高い評価を得ました。

スランソニー時代とイタリアへの移住

1808年には半島戦争に参加するためスペインに渡りますが、すぐに帰国。その後、スランソニー修道院跡に土地を購入し、田園生活を送ろうとしますが、隣人とのトラブルや訴訟に巻き込まれ、再びイタリアへ移住します。

イタリアでの生活は、ランダーの創作活動の最盛期でした。フィレンツェに定住し、『空想談話』を執筆・発表します。この作品は、彼の文学的評価を確固たるものにしました。しかし、イタリア当局とのトラブル、金銭的な問題、そして妻との不和など、彼の苦労は尽きませんでした。

後半生と晩年

晩年には、経済的な困窮にもかかわらず、創作活動を続けました。代表作の一つ『ペリクレスとアスパシア』を発表し、多くの友人たちと交流を深めます。チャールズ・ディケンズやロバート・ブラウニングといった文豪とも親交があり、彼らに影響を与えただけでなく、彼らからも大きな影響を受けました。

晩年になってもランダーは、政治や文学、社会問題について積極的に発言し続けました。イタリア統一運動にも関心を寄せ、ガリバルディを支援しました。89歳でフィレンツェで亡くなりました。

ランダーの文学的遺産

ランダーの作品は、その独特の文体、深い洞察力、そして自由な精神によって、後世の作家たちに多大な影響を与え続けました。彼の作品は、時代を超えて読み継がれ、その不朽の価値を証明しています。彼の墓碑銘「私は誰とも争わなかった」は、彼の生涯と文学を象徴する言葉として、広く知られています。

参考文献

John Forster, The Works and Life of Walter Savage Landor (8 vols., 1846)
R.H. Super, Walter Savage Landor (1954; reprinted 1977)
A.C. Swinburne, Miscellanies* (1886)

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