エズラ・パウンド

エズラ・パウンド：20世紀モダニズム詩の巨匠とその波乱の人生

エズラ・ウェストン・ルーミス・パウンド (1885年10月30日 - 1972年11月1日) は、20世紀を代表するアメリカ人詩人であり、音楽家、批評家としても知られています。T・S・エリオットと並び称されるモダニズム詩運動の中心人物として、その革新的な詩作と批評活動は、現代詩に多大な影響を与えました。

華麗なる初期とモダニズム運動への貢献

アイダホ州で生まれたパウンドは、ペンシルベニア大学、ハミルトン・カレッジで学び、若くして哲学とロマンス言語学の学位を取得。ウィリアム・カーロス・ウィリアムズやH.D.（ヒルダ・ドゥーリトル）ら、後のモダニズムを担う詩人たちと交流を深めました。H.D.とは婚約関係にあった時期もあります。

教職を経て1908年、22歳で渡欧。ロンドンを拠点に、フォード・マドックス・フォードやT.E.ヒュームらとの交流を通して詩作のスタイルを確立していきます。初期の詩作は19世紀の詩や中世文学の影響が強いものの、やがて古代的な表現や形式を脱却。W.B.イェイツの秘書を務めながら、イェイツやイマジズム、ヴォーティシズムといったモダニズム運動を牽引し、ジェームズ・ジョイス、ウィンダム・ルイスといった多くの作家や芸術家の作品を世に送り出しました。特にT・S・エリオットの代表作『荒地』の編集には大きく関わっています。

戦争と政治的転向

第一次世界大戦はパウンドの近代文明への信頼を揺るがし、戦後はロンドンを離れてパリに移住。パリのアバンギャルドな芸術家たちと交流を続けながら、『キャントウズ』の詩作を継続します。この作品には、次第に彼の政治的・経済思想が反映されていきます。また、この間、批評、翻訳、作曲など多方面で活躍しました。

1920年代半ばにはイタリアのラパッロに移住。そこでも創作活動は続き、若手芸術家を支援するなど、文化活動の中心人物として活躍しました。しかし、この頃からムッソリーニへの傾倒が強まり、反ユダヤ主義的な発言や著作も目立つようになります。第二次世界大戦中はイタリアに留まり、アメリカの参戦に反対する活動を行い、イタリアのラジオ放送で発言を行うなどしました。

戦後と晩年

終戦間際にはアメリカ軍に逮捕され、精神疾患を理由に裁判を免れ、ワシントンD.C.のセント・エリザベス病院に収容されました。ここでは12年間を過ごし、『ピザン・キャントウズ』を執筆。これは、彼の詩作における転換点とされ、ボーリンゲン賞を受賞するなど高い評価を受けました。

病院での生活の間も、パウンドは創作活動を続け、『キャントウズ』の執筆や儒教古典の翻訳などに従事しました。釈放後はイタリアに戻り、創作活動を続けましたが、以前のような情熱を失っていたようです。晩年には、過去における反ユダヤ主義的な言動について後悔の念を示しており、1972年、ヴェネツィアで没しました。

パウンドの影響

パウンドはムッソリーニ支持や反ユダヤ主義といった政治的立場から多くの批判を受けましたが、20世紀英文学におけるモダニズム詩への貢献は無視できません。自由詩の導入、イマジズムへの貢献、そして『キャントウズ』は、後の詩人たちに多大な影響を与えました。編集者・批評家としても、イェイツ、エリオット、ジョイス、ウィリアムズら多くの作家を支援し、また翻訳者としても、プロヴァンス詩、漢[[詩]]、能などを紹介しました。

パウンドの生涯は、モダニズム詩への大きな貢献と、複雑な政治的信条、そして個人的な葛藤が複雑に絡み合ったものでした。彼の作品と人生は、現代においても議論の的となっていますが、20世紀の文学史において、その重要性は揺るぎないものと言えるでしょう。

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