ウォルター・ダムロッシュ

ヴァルター・ヨハネス・ダムロシュ：クラシック音楽普及の先駆者

ヴァルター・ヨハネス・ダムロシュ（Walter Johannes Damrosch, 1862年1月30日 - 1950年12月22日）は、プロイセン（現ポーランド）出身のアメリカ人指揮者・作曲家です。彼は特にリヒャルト・ヴァーグナーの作品の指揮者として知られていますが、ラジオを通じたクラシック音楽の普及における先駆的な役割も果たしました。

生い立ちと音楽への道

ダムロシュは、ドイツ系ユダヤ人の家庭に生まれました。彼の父レオポルトと兄フランクも指揮者であり、幼い頃から音楽に囲まれた環境で育ちました。父レオポルトと、著名な指揮者ハンス・フォン・ビューローから音楽教育を受けました。1871年に家族と共にアメリカへ移住し、音楽家としてのキャリアをスタートさせます。

指揮者としての活躍

1885年から1891年まで、ダムロシュはメトロポリタン[[歌劇場]]の副指揮者を務めました。また、1885年から1898年、そして1917年から1921年までニューヨーク・オラトリオ協会の会長を務めました。1885年に父レオポルトを亡くした後、彼は後任としてニューヨーク交響楽団の指揮者となり、1928年までその職を務めました。

ヨーロッパ公演の際、船上で偶然アンドリュー・カーネギーと出会い、ニューヨークにコンサートホールを建設する夢を語ったことが、カーネギーの支援を引き出すきっかけとなりました。その結果、1891年にカーネギー・ホールが設立され、ニューヨークの音楽文化の発展に大きく貢献しました。さらに、1894年から1899年までダムロシュ歌劇団の会長として、ドイツオペラの紹介に尽力しました。

作曲家、そしてラジオを通じた音楽普及活動

ダムロシュは、作曲家としても知られていました。オペラ『シラノ・ド・ベルジュラック』（1913年）や『国なき男』（1937年）などを作曲しましたが、現在ではこれらの作品が演奏される機会はほとんどなく、ヴァーグナー作品の録音の方が広く知られています。

第一次世界大戦中はフランスで過ごし、戦後の1921年にはフォンテーヌブロー・アメリカ音楽院の設立に参加しました。1923年には自伝『My Musical Life』を出版しています。

ダムロシュは、ラジオを通じたクラシック音楽の普及に尽力した人物としても特筆されます。デイヴィッド・サーノフ時代のNBCで音楽監督を務め、1928年から1942年までNBCの児童向けクラシック教育番組「Music Appreciation Hour（音楽鑑賞の時間）」の司会者を担当しました。この番組は平日の昼間に放送され、学校の授業時間中に生徒が聴けるように、教師はNBCから教材とワークシートを提供されていました。

死去と功績

1950年12月22日、ダムロシュは心臓病のためニューヨークで亡くなりました。彼はハンス・フォン・ビューローから指導を受けた際に、ビューロー自身の書き込みのあるベートーヴェンの交響曲第9番の楽譜のコピーを入手しており、1927年の『ミュージカル・クォータリー』誌にそれに基づいたものを発表しています。

ダムロシュは、指揮者、作曲家としてだけでなく、教育者、そしてメディアを活用したクラシック音楽の普及者として、アメリカの音楽文化に多大な影響を与えた人物です。

ブロードウェイ作品

『平和の鳩』（1912年）- 歌劇/ミュージカル - 作曲家兼リブレット共作者
『エレクトラ』（1918年、ソフォクレスの作品の翻案）- 戯曲 - 付随音楽作曲者

もう一度検索