ウォルター・ベッカー

ウォルター・ベッカー：スティーリー・ダンの中心人物

ウォルター・ベッカー（Walter Becker, 1950年2月20日 - 2017年9月3日）は、アメリカ合衆国出身のミュージシャンであり、特にジャズ・ロック・グループ「スティーリー・ダン」の中心メンバーとしてその名を知られています。彼はギタリストとしてだけでなく、ベーシスト、そしてレコードプロデューサーとしても才能を発揮しました。ニューヨーク市クイーンズ区で生まれ、その音楽キャリアをスタートさせました。

生い立ちと音楽との出会い

ドイツ系の家庭に生まれたベッカーは、ニューヨークのスタイヴェサント高等学校を卒業後、バード大学に進学。そこで、後にスティーリー・ダンを共に結成するドナルド・フェイゲンと運命的な出会いを果たします。音楽的パートナーシップを築くきっかけとなりました。隣人のランディ・カリフォルニアからブルースギターの技術を学び、独自の音楽性を磨きました。フェイゲンはベッカーのギタープレイを評して、「現代的で黒人のようなフィーリング」と語っています。

スティーリー・ダンとしての成功

初期には、コメディアンのチェビー・チェイスがドラマーとして参加していたバンドで活動。その後、ジェイ・アンド・ジ・アメリカンズでの活動や、作曲家としての活動を経て、1970年代初頭にスティーリー・ダンを結成します。ベッカーのギタリストとしての腕は、ブルーアイド・ソウル、クロスオーヴァー、ジャズ・ロック、ジャズといった多様な音楽性を融合させたスティーリー・ダンのサウンドを支えました。

1972年には、ラテン音楽の影響を受けた「ドゥ・イット・アゲイン」がヒット。1974年には「リキの電話番号」がシングルとして大ヒットを記録しました。1977年のアルバム『エイジャ』は商業的に大きな成功を収め、「麗しのペグ」などのヒット曲を生み出しました。1978年には、映画のサウンドトラックに収録された「FM」もヒット。1980年にはアルバム『ガウチョ』と、シングル「ヘイ・ナインティーン」がヒットしました。

ソロ活動とプロデュース

1981年にスティーリー・ダンが一時的に解散した後、ベッカーはハワイのマウイ島に移住し、プロデューサーとしての活動を開始。リッキー・リー・ジョーンズ、チャイナ・クライシス、マイケル・フランクスなど、様々なアーティストの作品を手がけました。

1993年、スティーリー・ダンは再結成。ベッカーがフェイゲンのアルバム『カマキリアド』をプロデュースしたことがきっかけとなり、デュオとしての活動を再開しました。その後、フェイゲンはベッカーのソロデビューアルバム『11の心象』（1994年）を共同プロデュースしています。2008年には、ベッカー自身のソロアルバム『サーカス・マネー』を発表しました。

晩年と死

2017年9月3日、ベッカーは67歳で逝去。当初、詳しい死因は公表されませんでしたが、後に妻のデリア・ベッカーが、極度に進行した食道癌の治療中にニューヨークの自宅で亡くなったことを明かしました。長年の音楽パートナーであったドナルド・フェイゲンは、ベッカーを「聡明で優れたギタリスト、偉大なソングライター」と追悼し、スティーリー・ダンとして作り上げた音楽を大切にしていくと語りました。

ディスコグラフィー

ソロ・アルバム

1994年：11の心象 11 Tracks Of Whack
2008年：サーカス・マネー Circus Money

書籍

『スティーリー・ダン　Aja作曲術と作詞法』（2012年）
『スティーリー・ダン・ストーリー　リーリン・イン・ジ・イヤーズ 完全版』（2017年）

ウォルター・ベッカーは、その卓越した音楽性とプロデュース能力で、スティーリー・ダンを唯一無二の存在へと押し上げました。彼の音楽は、これからも多くの人々に愛され続けるでしょう。

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