ウォロ飢饉 (1972年-1975年)

ウォロ飢饉：帝国の黄昏と人々の苦難

1972年から1973年にかけて、エチオピア帝国のウォロ地方を襲った大飢饉は、単なる自然災害ではなく、政治的、社会的な要因が複雑に絡み合った悲劇でした。この飢饉は、ハイレ・セラシエ皇帝の統治下で発生し、数万人から数十万人の命を奪い、その後のエチオピア社会に大きな影響を与えました。

飢饉の背景：繰り返される危機と政府の怠慢

ウォロ飢饉以前にも、エチオピアでは飢饉が繰り返されていました。1958年にはティグレ県で最初の飢饉が報告され、1965年にはウェレ・イルでも飢饉が発生しました。しかし、帝国政府はこれらの危機に対して十分な対応を取らず、事態の深刻さを認識するまでに時間がかかりました。ウェレ・イルの飢饉では、警察が状況を把握してから皇帝に報告が届くまで320日もかかり、その間、有効な対策は講じられませんでした。

飢饉の発生：複合的な要因が引き起こした悲劇

1972年、ウォロ地方は深刻な旱魃に見舞われました。しかし、飢饉の真の原因は、旱魃だけでなく、政府の不適切な対応、封建的な社会体制、そして政府による情報隠蔽にありました。政府は飢餓の深刻さを認識しながらも、十分な対策を講じず、国際的な支援の受け入れも遅れました。また、封建的な社会体制の下で、地主は小作人から過酷な小作料を取り立て、飢饉をさらに悪化させました。

BBCニュース報道によれば、1973年の推計として、当時のエチオピア栄養研究所の推計に基づき、20万人が死亡したとされています。この数値は一部の文献やメディアで今も引用されていますが、後にその推計は「悲観的過ぎる」ことが判明しました。

飢饉の影響：社会の混乱と政変

ウォロ飢饉は、ハイレ・セラシエ政府の崩壊の主な原因の一つと見なされました。飢饉に対する政府の対応の遅れは、国民の不満を高め、1974年のエチオピア革命につながりました。革命後、デルグ政権が成立しましたが、混乱は続き、1975年には死者数が25万人に達したと推定されています。

ウォロ飢饉は、エチオピアの農民革命に結びつき、その後のデルグ体制を通じて継続されました。同様に、デジャズマチ・ベルハネ・メスケルの反乱、旧地主層と政府治安部隊への襲撃、複数年に渡るデルグ政府への攻撃が発生しました。

飢饉から学ぶ教訓：再発防止のために

ウォロ飢饉は、自然災害だけでなく、政治、社会、経済など、様々な要因が複合的に絡み合って発生する可能性があることを示しました。飢饉の再発を防ぐためには、政府の迅速かつ適切な対応、社会的な不平等の解消、そして透明性の高い情報公開が不可欠です。ウォロ飢饉の教訓を胸に、私たちはより良い未来を築いていかなければなりません。

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