エチオピア帝国

エチオピア帝国

エチオピア帝国（ንጉሠ ነገሥት መንግሥት）は、1270年から1974年にかけて存在したアフリカ東部の重要な国家です。この国は、現代のエチオピアとエリトリアのほぼすべての領域を支配し、最大時にはソマリア、ジブチ、ケニア、スーダン、南スーダン、エジプト、さらにはアラビア半島の一部にまで広がりました。エチオピアは、ヨーロッパによるアフリカの分割時にも独立を保っていたため、アフリカで最も古い独立国として知られています。

エチオピア帝国の歴史は、実際には複数の王朝の交代で構成されており、時には皇帝が存在しなかった時代もあります。以前のザグウェ朝もエチオピア帝国の歴史の一部と見なされており、場合によってはその成立年を1137年とすることもあります。1974年、軍事クーデターによってハイレ・セラシエ1世が帝位を追われ、その結果、700年にわたるエチオピア帝国の歴史は幕を下ろしました。

歴史の概要

エチオピアの歴史は紀元前5世紀から始まります。この時期には、アクスム王国が繁栄しており、ソロモン王とシバの女王の子孫を称する権威を持っていました。しかし、10世紀にはザグウェ朝が興隆し、アクスム王国に代わって政権を握ります。ザグウェ朝も王位継承に関する争いによって衰退し、1270年にはイクノ・アムラクによって滅ぼされました。彼はエチオピア帝国の初代皇帝となり、彼の王朝はソロモン朝と呼ばれました。

イクノ・アムラク死後、彼の子孫たちは後継者争いを繰り広げましたが、アムダ・セヨン1世が帝位に就くことで混乱は収拾されました。セヨン1世は、イスラム勢力の影響を受ける南方の高原地帯において勢力を拡大し、1445年には宿敵アダル・イスラム同盟との戦争に勝利しました。

1493年、ポルトガルとの外交が始まりましたが、16世紀半ばからオロモ人の移動が始まり、なんらかの不安定要因となりました。1526年にはアダル軍のアーマッド・グランによる「聖戦」に直面しましたが、1543年にはエチオピア皇帝ガローデオスがポルトガルの支援を得て勝利を収めました。

その後、エチオピアはカトリック伝道の影響を受け、宗派対立による内乱が発生しました。スセニョス1世の時代には、対立がさらに激化し、彼は一時的に退位する事態となります。スセニョスの後、再び国を安定させたのはファシラダスで、彼は内戦を終結させ、社会の安定化に尽力しました。これにより、首都がゴンダールに移転され、「ゴンダール時代」が始まります。

しかし、ソロモン朝は16世紀以降衰退し、混乱の時代が訪れることとなりました。テオドロス2世の治世以降、メネリク2世がイタリアによる侵略と戦い、1896年のアドワの戦いではこれに見事な勝利を収めました。この勝利により、エチオピアは他のアフリカ諸国と違って独立国としての地位を保持しました。

1936年にイタリアがエチオピアを併合した後、1941年には再独立を果たしました。しかし、1974年の軍部によるクーデターによりエチオピア帝国は終焉を迎えました。

歴代皇帝

エチオピアの皇帝はアムハラ語で「ネグサ・ナガスト」と呼ばれています。皇帝の権威が圧倒的でないときは「ネグス」または「ラス」と呼ばれることもありました。歴代の皇帝は、慎重な政策のもとで国を治めましたが、時折、重い権力闘争や王朝の交代などに直面しました。

現在、エチオピア帝国の復活を目指す亡命政府が存在し、エチオピア帝国の正統性を主張しています。アフリカの歴史において、エチオピア帝国は独自の文化と歴史を持つ国として特別な地位を築いています。

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