エチオピア革命

エチオピア革命：帝国の終焉と社会主義への道

1974年、エチオピア帝国は長く続いた歴史に幕を閉じ、革命によって新たな時代へと突入しました。この革命は、単なる政権交代ではなく、数世紀にわたる複雑な歴史的、社会的な要因が絡み合った結果でした。本稿では、革命に至るまでの背景から、その勃発、そして革命後の混乱期までを詳細に解説します。

ソロモン王朝と続く混乱

エチオピアの歴史は、紀元3世紀に遡るソロモン王朝に始まり、アムハラ人の国家として近隣諸国に影響力を及ぼしました。しかし、16世紀以降はオスマン・トルコやソマリア、オロモ族などとの抗争が激化し、国内は混乱を極めます。18世紀にはオロモ族が台頭し、アムハラ人の影響力が衰え、18世紀後半から19世紀前半にかけては「ラス達の時代」と呼ばれる戦乱の時代が続きました。この混乱の中でソロモン朝は崩壊し、1855年にテオドロス2世によってテオドロス朝が成立します。

近代化政策の挫折

19世紀半ばから、エチオピア帝国は近代化を模索し始めました。テオドロス2世、ヨハンネス4世、メネリク2世と続く皇帝たちは、官僚制の導入や経済発展を目指しましたが、それは容易ではありませんでした。それぞれの皇帝は近代化政策に独自の戦略を採り、官僚制の構築、経済政策、軍事力強化などを試みました。メネリク2世は、イタリアとの植民地化戦争に勝利したことで、近代化政策の成功例として一時的に評価されました。


しかし、ハイレ・セラシエ1世の時代に入ると、近代化政策は新たな課題に直面します。1931年の憲法制定による立憲君主制は形式的なものであり、皇帝の絶対権は揺るぎませんでした。教育政策や省庁の設置など、近代化の努力は続きましたが、農村部の半封建的な社会構造や、土地所有の不平等といった根本的な問題には取り組めず、効果は限定的でした。また、急激な近代化は、伝統的な社会秩序を揺るがし、反乱や暴力沙汰を招き、民衆の不満を募らせる結果となりました。経済的にも、土地を持たない農民は過酷な小作制度の下に苦しんでおり、政府による土地接収や税の過剰徴収は、民衆の反感をさらに煽りました。

反帝政感情の高まりとクーデター未遂

ハイレ・セラシエ1世政権に対する批判は、1960年代以降、ますます強まりました。ウォロ飢饉やエリトリア独立戦争、そして、国民の貧困と政府の無策への不満が、社会運動や反乱へとつながりました。1960年にはクーデター未遂事件が発生、ハイレ・セラシエ1世に対する反対運動の機運が高まりました。1970年代初頭には、深刻な干ばつに見舞われたエチオピア帝国は、その被害を隠蔽したことで、国民の怒りは頂点に達します。

革命の勃発とその後

1974年1月、軍内部の不満が爆発し、ネジェレ・ボレナで将校に対する反乱が発生、エチオピア革命が始まりました。低賃金やエリトリア独立戦争の疲弊など、兵士たちの不満は膨れ上がっており、反皇帝勢力が軍内部で勢力を増していきました。「デルグ」と呼ばれる軍部組織が台頭し、急速に勢力を拡大しました。王室は様々な対策を講じましたが、革命の勢いを止めることはできませんでした。


1974年9月12日、デルグはハイレ・セラシエ1世とその政府を打倒し、軍事政権を樹立しました。皇帝や皇族は投獄・処刑され、帝政は終焉を迎えました。デルグはマルクス・レーニン主義をイデオロギーとして掲げ、社会主義国家建設を目指しましたが、その過程で新たな独裁体制が形成され、エチオピアは再び内乱と混乱の渦に巻き込まれていくことになります。革命後のエチオピアは、民主主義とは程遠い政策が敷かれ、独自の地域政権がいくつも誕生するなど、政治的不安定さを増し、数々の革命と同様の混乱を招きました。

参考文献

Tiruneh, Andargachew『The Ethiopian Revolution 1974-1987: A transformation from an aristocratic to a totalitarian autocracy』Cambridge University Press、1993年。
Keller, Edmond J.『Revolutionary Ethiopia : from empire to people's republic』Bloomington : Indiana University Press、1991年。
Gilkes, Patrick『The Dying Lion: Feudalism and Modernization in Ethiopia』London : Julian Friedmann Publishers Ltd.、1975年。
Gebru, Tareke『The Ethiopian Revolution: War in the Horn of Africa』Yale University Press、2009年。

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