ウォーバーグ研究所

ウォーバーグ研究所：ルネサンス研究の揺籃と現代への継承

ウォーバーグ[研究所]]は、ロンドン大学に属する人文科学専門の研究所です。その設立は、20世紀の美術史研究に多大な影響を与えた、著名な美術史家[[アビ・ヴァールブルク]に遡ります。

ヴァールブルクは裕福なユダヤ人銀行家の子息として生まれ、ルネサンス美術への深い関心を持ちました。彼は、美術作品を単なる芸術作品としてではなく、当時の社会、文化、精神性を反映した歴史的産物として捉える独自の視点を確立しました。この視点は、精神史と文化史を融合させたアプローチとして、後の美術史研究に大きな影響を与えました。

彼の研究活動は、膨大な数の書籍や視覚資料の収集を必要としました。ヴァールブルクは一族からの相続権を放棄する代わりに、生涯にわたる研究費用の保証を受け、徹底的な資料収集に没頭しました。

1921年、ハンブルクで設立された研究所は、彼の没後も活動を継続しましたが、ナチスの台頭により存続の危機に瀕します。そこで、6万冊に及ぶ蔵書と資料はロンドンに移され、1944年からロンドン大学付属研究所として運営されるようになりました。

現在、研究所は35万冊を超える蔵書を誇ります。その多くは一般の研究者にも無料で公開されており、美術史のみならず、政治史、社会史などあらゆる人文科学分野の書籍が所蔵されています。書籍に加え、ヴァールブルク自身のメモや原稿、写真、版画などの視覚資料も貴重なコレクションとして保管されています。

研究所は、司書やアーカイブ管理担当者など、多くのスタッフを擁し、学術誌の発行、講演会やシンポジウムの開催、若手研究者へのフェローシップ提供など、活発な活動を展開しています。

ウォーバーグ研究所の学術的意義

ウォーバーグ研究所とその関係者たちは、しばしば「ヴァールブルク学派」と呼ばれます。これは、研究所の活動に創設者ヴァールブルクの影響が強く反映されているためです。

初代所長フリッツ・ザクスルによると、研究所の設立目的は、古代世界が西欧文化に与えた影響とその伝播経路を解明することでした。特に、15世紀イタリア美術に見られるイメージを、当時の精神生活の中に再現することを目指し、文学、神学、哲学、社会、経済など、あらゆる要素が研究対象となりました。

この学際的な研究アプローチは、後の美術史研究に大きな影響を与えました。特に、エルヴィン・パノフスキーによる「イコノロジー」の体系化は、美術史研究における主要な方法論として現在も広く用いられています。

他にも、E.H. ゴンブリッチ、ルドルフ・ウイトコウアー、レイモンド・クリバンスキーなど、20世紀前半の美術史学をリードした多くの著名な研究者たちがウォーバーグ研究所と関わってきました。また、ルネサンス精神史研究で知られるフランセス・イエイツの著作も、研究所の資料に大きく依拠しています。

近年では、イスラーム世界をテーマとしたシンポジウムを繰り返し開催するなど、設立当初からの学際性と広範な研究対象という伝統は現代においても受け継がれています。

まとめ

ウォーバーグ研究所は、その膨大な蔵書と視覚資料、そして独自の学際的研究アプローチによって、ルネサンス研究のみならず、人文科学全般に多大な貢献を果たしてきました。設立から100年以上を経た現在も、活発な研究活動と人材育成を通して、学術界を牽引し続けています。

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