ウォーリーズ・カフェ

ウォーリーズ・カフェの歴史

ウォーリーズ・カフェ（Wally's Cafe）は、アメリカのマサチューセッツ州ボストンに位置するジャズクラブで、その歴史は驚くほど古く、地域において継続的に運営されている店舗としては老舗ともいえる存在です。ボストンのサウス・エンドにあたるこの場所は、近隣にあるバークリー音楽大学の卒業生をはじめ、地域の多くの若手ミュージシャンたちが集う拠点として知られています。

このカフェは、1910年にバルバドスから移民したジョセフ・L・ウォルコット（Joseph L. Walcott）によって創業されました。若き日のウォルコットは、エリス島を経てボストンに住む兄のもとへ移ります。その後、様々な職に従事し資金を貯め、1947年には自らの店「ウォーリーズ・パラダイス（Wally's Paradise）」をオープンさせました。ここで彼は、ニューイングランド地区初のアフリカ系アメリカ人のナイトクラブオーナーとして、その名を馳せました。

ウォルコットは、ジャズの発展を促すべく新しいアーティストたちを積極的に呼び寄せ、彼の店にはジャズを愛する観客たちが著名なバンドの演奏を楽しむために集まるようになりました。しかし、時代が進み1960年代になりますと、ビッグバンドの時代は終焉を迎えます。この変化に対してウォルコットは、バークリー音楽大学をはじめとする音楽院から若い才能を引き入れることで、ジャズの文化を貫きました。

彼の取り組みは特筆すべきもので、新人たちと共に年配のビッグバンドの奏者たちを共演ロスターに迎え入れることで、音楽シーンの活性化に寄与しました。このような学生たちとの共演は貴重な経験となり、会場に足を運ぶジャズファンたちに新しい風をもたらしました。

1979年、ウォーリーズ・カフェはマサチューセッツ・アベニューの428番地から、現在の427番地へと移転しました。移転後も、カフェでは年中無休で生のジャズ演奏が行われ、プロのミュージシャンたちがその腕を披露しつつ、若手演奏家たちにも出番を与えています。これは創業当初から続く伝統であり、次世代の音楽家を育てる場としても機能しています。

1998年、ウォルコットが101歳でこの世を去ると、彼の子どもたちがその意志を引き継ぎ、現在も家族経営による温かな雰囲気が保たれています。特に、娘のエリノア（Elynor）や孫たちのポール（Paul）、フランク（Frank）、ロイド（Lloyd）たちがこの伝統を守り続けています。

さらに、2009年1月30日にはボストニアン協会によって、ウォーリーズ・カフェの建物が歴史的なランドマークとして認定され、その証としてプラークが設置されました。これは、この場所がボストンの音楽史において果たした重要な役割を象徴するものと言えるでしょう。ウォーリーズ・カフェは、その卓越した歴史だけでなく、今もなお音楽を愛する人々にとって魅力的なスポットであり続けています。

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