ウクライナの宗教

ウクライナの宗教

ウクライナは古くから多様な宗教が共存してきた国です。この記事では、ウクライナの宗教の歴史、主要な宗教・宗派、そして社会における宗教の役割について解説します。

歴史

現在のウクライナ地域には、古代から多神教や自然崇拝を行う部族が居住していました。10世紀頃にはキエフ・ルーシが台頭し、ビザンティン帝国の影響を受け、945年または957年にオリガ大公妃がキリスト教に改宗したとされています。その後、ウラジーミル大公が国民をキリスト教に改宗させたことで、東方正教会がウクライナの主要な宗教となりました。

一方、黒海沿岸へのギリシャの植民地進出とともにユダヤ教が伝来し、約2000年にわたってウクライナに根付いています。13世紀以降、ユダヤ人の存在感は増し、ハシディズムなどの新しい教えも確立されました。また、クリミア・ハン国がオスマン帝国の属国となったことを背景に、クリミア・タタール人を中心にイスラム教も広まりました。

ソ連時代には共産主義政権による宗教弾圧が行われましたが、ソ連崩壊後のウクライナ憲法では信教の自由が保障されています。

主要な宗教・宗派

ウクライナにおける主要な宗教は、東方正教会、カトリック教会、プロテスタント、イスラム教、ユダヤ教などです。それぞれに様々な系統や派閥が存在し、複雑な歴史的背景を持っています。

東方正教会

ウクライナ正教会は、信者数で最も大きな教会です。2018年には、ウクライナ正教会・キエフ総主教庁とウクライナ独立正教会が統合し、新生ウクライナ正教会が設立されました。これにより、ウクライナ正教会はモスクワ総主教庁系と新生ウクライナ正教会の大きく2つに分けられます。モスクワ総主教庁系は、ウクライナの中部・南部・東部に多くの信者を抱えています。新生ウクライナ正教会は、ウクライナの独立性とナショナリズムの高まりを反映した教会です。

カトリック教会

カトリック教会は、東方典礼カトリック教会（ウクライナ・ギリシア・カトリック教会）とローマ・カトリック教会に分かれます。東方典礼カトリック教会は、正教会の伝統を継承しつつ、ローマ教皇を最高指導者とするカトリック教会です。ローマ・カトリック教会は、主に中部と東部に信者が多いです。

プロテスタント

ウクライナには、ペンテコステ派、バプテスト派、ルーテル派など様々なプロテスタント教会が存在します。

イスラム教

ウクライナのイスラム教徒は、主にクリミア半島に集中しており、クリミア・タタール人が多くを占めています。

ユダヤ教

ウクライナには、正統派ユダヤ教、改革派ユダヤ教など複数のユダヤ教の宗派が存在します。

宗教と社会

2003年の調査によると、ウクライナ国民の75.2%が神を信じており、定期的に教会に通う人は37.4%にのぼります。しかし、どの宗教団体に属しているか、あるいはどの教会に通っているのかを明確に答えることができない人も多くいます。ウクライナ社会においては、宗教が人々の生活に深く関わっている一方で、宗教への関わり方は多様で複雑です。

その他の宗教

上記以外にも、アルメニア教会、エホバの証人、末日聖徒イエス・キリスト教会、セブンスデー・アドベンチスト教会など、様々な宗教や宗教運動がウクライナに存在しています。

結論

ウクライナは、歴史的に複雑な宗教的多様性を有する国です。多様な宗教が共存する一方、宗教を巡る社会的な議論も存在します。現代ウクライナの宗教的状況を理解するには、歴史的背景と社会情勢を考慮することが重要です。

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