ウクライナ・バロック

ウクライナ・バロックとは

ウクライナ・バロック（ウクライナ語: Українське бароко）は、18世紀にウクライナで隆盛したバロック様式です。この様式は、コサックのヘーチマン国家を中心に発展したため、コサック・バロックとも呼ばれます。また、イヴァン・マゼーパが文化振興に貢献したことから、マゼーパ様式とも称されます。

歴史的背景

ウクライナは、長らくポーランド王国の影響下にありましたが、正教の伝統を保持しつつ、西ヨーロッパの文化的影響も強く受けました。17世紀には、コサックが力を増し、ポーランド王国とロシア（モスクワ大公国）の両方から距離を置き、独自の文化を形成するようになりました。歴代のヘーチマンたちは、自身の文化的素養を示すため、文化振興に力を注ぎました。その結果、ウクライナには西ヨーロッパとは異なる独自のバロック様式が誕生しました。

18世紀には、ガリシア出身の彫刻家ゲオルグ・ピンセルが活躍し、ルーブル美術館で展覧会が開催されるなど、ヨーロッパを代表する彫刻家として認知されました。

特徴

ウクライナ・バロックは、西ヨーロッパのバロックと比較して、装飾がより控えめで、フォルムが簡素化されているのが特徴です。多くの建築物は戦災で失われましたが、キーウのキーウ洞窟大修道院、聖ソフィア大聖堂、ヴィードゥブィチ修道院、聖ムィハイール黄金ドーム修道院など、現存する建築物も多くあります。

絵画においては、キーウ洞窟修道院の三位一体大門教会の壁画が代表的です。また、版画芸術も大きく発展し、象徴主義、アレゴリー、紋章学の記号を用いた複雑で壮麗な装飾が特徴です。

他の文化への影響

ウクライナ・バロックは、ロシアのナルィーシュキン・バロックに大きな影響を与えました。また、1927年から1932年にかけてキエフ旅客駅（現在のキーウ旅客駅）を建て替える際、ウクライナ・バロックの様式と構成主義の要素を組み合わせたデザインが採用されました。

代表的な建築物

キーウ

聖ソフィア大聖堂
聖ムィハイール黄金ドーム修道院
三位一体大門教会
聖ムィコラーイ軍事大聖堂

ポルタヴァ州

救世主顕栄教会

関連文献

伊東一郎「ゴーゴリ - ウクライナ・バロック - 民衆文化 (M・バフチン『ラブレーとゴーゴリ』に寄せて)」『早稲田大学大学院文学研究科紀要. 文学・芸術学編』第39巻、早稲田大学大学院文学研究科、1993年、79-92頁

関連項目

ナルィーシュキン・バロック
ロシア・バロック
ヘーチマン国家
ロシア・アヴァンギャルド
ポーランド

外部リンク

Baroque（Encyclopedia of UKRAINE の記事、英語）

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