ウジェーヌ2世・ド・リーニュ

ウジェーヌ・フレデリック・マリー・ラモラル・ド・リーニュ（1893年 - 1960年）は、ベルギーの貴族であり外交官です。第11代リーニュ公として知られ、アンブリス公、エピノワ公の称号も保持していました。また、オーストリア系の金羊毛勲章を受章しています。

リーニュ家は、11世紀に起源を持つベルギーの由緒ある貴族の家柄です。ウジェーヌは、リーニュ公エルネストとディアーヌ・ド・コッセ＝ブリサックの長男として生まれました。1917年には、ポワ公フランソワ・ド・ノアイユの娘フィリッピーヌと結婚しています。

大学では哲学と文学を修め、1920年に外交官試験に合格。ブカレスト、パリ、マドリード、ロンドン、ワシントンD.C.など、欧米の主要都市にあるベルギー大使館に勤務しました。1920年代には、パッカード社製の自動車でインドを旅行。1925年には、妻と共にベルギー委任統治領ルアンダ＝ウルンディに滞在しました。1931年には、アフリカ自動車探検隊に参加し、サハラ砂漠を縦断してベルギー領コンゴに到達。ハルツーム、カイロ、ルクソール、アレクサンドリアなど、アフリカの都市も訪問しました。

1937年に父の死去に伴い、リーニュ公位を継承。第二次世界大戦中の1940年、ナチス・ドイツがベルギーを占領した際には、アントウェルペンでベルギー軍の自動車部隊の司令官として防衛に当たりました。占領下では、居城ベルイユ城にユダヤ人の子供26人を匿い、強制収容所への移送から守りました。また、300人のユダヤ人に避難場所を提供し、その命を救いました。これらの功績が認められ、1975年にヤド・ヴァシェムから「諸国民の中の正義の人」の称号を贈られています。

戦後は外交官としての活動を再開。1947年から1951年まで駐インド大使としてニューデリーに、1951年から1958年まで駐スペイン大使としてマドリードに赴任しました。スペイン大使としては、前任者のベイエンス男爵がフランコ総統の怒りを買い退任した後の後任として任命されました。

妻フィリッピーヌとの間には、2男2女をもうけました。長男のボードゥアン・マリー・ラモラルは第12代リーニュ公を継承。娘のイザベルは、ヴィジャロバル侯爵カルロス・デ・サーベドラ・イ・オソレスと結婚。ヨランドはオーストリア大公カール・ルートヴィヒと結婚。アントワーヌ・マリー・ジョアシャン・ラモラルは第13代リーニュ公となり、ルクセンブルク大公女アリックスと結婚しました。

ウジェーヌ2世は、貴族としての地位と外交官としての才能を生かし、激動の時代を生き抜きました。特に、第二次世界大戦中のユダヤ人救済活動は、人道的な勇気を示すものとして高く評価されています。

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