ウズベキスタンの医療

ウズベキスタンの医療：現状と課題

ウズベキスタンの医療システムは、ソビエト連邦崩壊後、深刻な問題に直面しています。ソ連時代の医療機器の老朽化、医師の国外流出、医療費の減少など、複合的な要因が医療の質の低下につながっています。

医療インフラと資源の不足

ソ連崩壊後、ウズベキスタンでは医療費と一人当たりの病床数が激減しました。1992年から2003年の間に、それぞれ約50％まで減少したと推定されています。医療機器の老朽化も深刻で、使い捨て注射針や麻酔薬、抗生物質などの医療用具が不足している状況です。この状況は、国民の健康に直接的な悪影響を与えています。

人口1万人当たりの病床数は2004年時点で53床と、先進国と比較して著しく少ないです。また、医療サービスの質も低く、国民はしばしば賄賂を払って医療を受けることを余儀なくされています。健康保険制度は存在するものの、その機能は十分に発揮されておらず、医療へのアクセスは依然として困難です。

主要な健康問題

ウズベキスタン国民の健康を脅かす主要な問題として、汚染された飲料水に関連する感染症が挙げられます。腸チフス、肝炎、赤痢、コレラなどの感染症は、依然として大きな脅威となっています。さらに、様々な種類の癌も深刻な問題です。一方、死因の上位を占めるのは、心血管疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、感染症、寄生虫症です。

近年では、HIV/AIDSの感染拡大も深刻な問題となっています。2002年以降、感染者数は急増しており、これは薬物乱用の増加と関連していると考えられています。2004年には2,000件、2005年には約5,600件の新たな感染が報告されました。感染者の多くは薬物使用者であり、タシュケントやアフガニスタンとの国境地域であるスルハンダリヤ州で特に感染率が高い傾向が見られます。ウズベキスタンを介した麻薬取引の増加も、この問題をさらに悪化させています。

政府は、HIV治療とカウンセリングを行う医療センターを設立するなど、対策に乗り出していますが、課題は依然として残されています。

母子保健

母子保健の分野では、少しずつ改善が見られるものの、依然として課題は多いです。2010年の出生10万人当たりの産婦死亡率は30人と、1990年の61.1人からは改善していますが、依然として高い数値です。また、1,000人当たりの5歳未満児死亡率は38人であり、そのうち新生児死亡率は48％を占めます。助産師の不足も深刻な問題であり、1,000人に1人しか助産師がいない地域も存在します。

国際連合人口基金は、ミレニアム開発目標の達成に向けて、母子保健の改善に力を入れていますが、ウズベキスタンでは、依然として多くの妊婦が死亡リスクにさらされています。

政府の取り組みと今後の展望

ウズベキスタン政府は、2000年代前半からプライマリ・ヘルスケア施設の改善や入院設備のコスト削減などの政策を打ち出しています。2006年の国家予算では、医療費に11.1％が割り当てられ、前年よりわずかながら増加しています。しかし、これらの取り組みが十分な成果を上げているとは言えず、医療システムの抜本的な改革が必要です。

国際機関の支援も不可欠です。国際協力を通じて、医療機器や医薬品の供給、医療従事者の育成、公衆衛生の向上を図る必要があります。ウズベキスタンの医療が改善されるためには、政府、国際機関、国民の協調的な取り組みが不可欠です。

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