ウッドマイルズ

ウッドマイルズとは

ウッドマイルズとは、食料の輸送距離に着目した「フードマイレージ」の考え方を木材に応用した概念です。具体的には、木材の輸送距離を減らすことで、輸送エネルギーの削減、ひいては地球温暖化の防止を目指す活動を指します。国内や地域で生産された木材を国内で消費することにより、環境負荷を減らし、循環型社会の構築に貢献することが目的です。

ウッドマイルズ誕生の背景

ウッドマイルズの概念が生まれた背景には、海外からの木材輸入にまつわる様々な問題があります。1994年にイギリスの消費者運動家ティム・ラングが提唱したフードマイレージは、食料の生産地から消費地までの距離に着目し、地元の食材を優先的に利用するという運動でした。この考え方を木材に当てはめたのがウッドマイルズです。

日本は、安価な輸入木材に大きく依存しており、大量の木材を海外から輸送しています。この輸送には膨大なエネルギーが消費され、環境への負荷が懸念されていました。2001年には、新聞コラムで「フードマイレージ」が紹介された際、読者から「木材の輸送距離こそ問題であり、住宅に使用する木材の輸送距離を計算すべきだ」との意見が寄せられました。この意見を受け、森林総合研究所の藤原氏が「ウッドマイルズ（木材総輸送距離）と地域材利用住宅」という論文を発表したことをきっかけに、ウッドマイルズという言葉と概念が広く知られるようになりました。

ウッドマイルズの概要

現在の日本の木材自給率は約20%程度であり、年々低下傾向にあります。その背景には、安価な輸入木材の普及と、林業従事者の高齢化と後継者不足があります。その結果、林業経営が成り立たず、森林の維持管理が行き届かなくなり、森林の荒廃が進んでいます。荒廃した森林では、CO2の吸収量が減少し、保水能力も低下します。土砂崩れなどの自然災害のリスクも高まり、自然環境の悪化を招きます。

ウッドマイルズは、国産木材の利用を促進することで、輸入木材の輸送量を減らし、輸送に伴うCO2排出量を削減することを目指しています。また、森林の維持管理を促し、林業の再生と自然保護を両立させることを目的としています。

ウッドマイルズとは、「[木材]」が運ばれてきた「距離(miles)」を示す、木材輸送に特化した環境指標です。

ウッドマイルズの指標

ウッドマイルズ研究会では、「ウッドマイルズ関連指標算出マニュアル」を作成し、以下の4つの指標を提示しています。

1. ウッドマイレージ: 輸送される木材の量と実際の輸送距離を総合的に示す指標。
2. ウッドマイレージL: 輸送される木材の量と直線距離を総合的に示す指標。
3. ウッドマイレージCO2: 木材の輸送過程における環境負荷（CO2排出量）を示す指標。
4. 流通把握度: 木材のトレーサビリティ（追跡可能性）の度合を示す指標。

これらの指標を使い分けることで、木材輸送の実態をより詳細に把握し、環境負荷の低減に繋げることができます。

ウッドマイルズの基本理念

ウッドマイルズの基本的な考え方として、以下の点が挙げられます。

1. 輸送エネルギーのコスト削減とCO2排出量の削減: 木材輸送距離を短縮することで、輸送エネルギーの消費量を減らし、CO2排出量を削減します。
2. 外国の森林の違法伐採の防止: 輸入木材への依存を減らすことで、違法伐採が行われている可能性のある森林の保護に貢献します。
3. 仮想水（バーチャルウォーター）の観点からの水資源の保護: 木材の生産には水が不可欠です。国産木材の利用を促進することで、海外の水資源への負荷を減らすことができます。

まとめ

ウッドマイルズは、木材の輸送距離に着目した環境指標であり、国産木材の利用を促進し、環境負荷の低減、森林保護、林業の活性化に貢献する概念です。持続可能な社会の実現に向けて、ウッドマイルズの考え方を参考に、木材の地産地消を推進していくことが重要です。

ウッドマイルズ