ウベアイス

ウベアイスクリームは、フィリピン発祥の、その名の通りウベ（和名では紅山芋やダイジョと呼ばれるヤムイモの一種）を主原料として作られるアイスクリームです。ウベ特有の鮮やかな紫色、やさしい甘さ、そしてほのかにナッツのような風味は、古くからウベ・ハラヤなど様々な形でフィリピンの食文化に根付いてきました。特に、フィリピンを代表する冷たいデザートであるハロハロの材料として、広く用いられています。

ウベがアイスクリームの材料として使われるようになったのは、比較的近年のことです。フィリピンにアイスクリーム文化が根付いたのは、アメリカ占領下で「ソルベテス」と呼ばれるフィリピン風アイスが生まれた頃とされています。その初期、1920年代にはすでに、地元の食材を生かした新しいフレーバーが模索されており、マンゴーやメロンなどと共に、ウベもアイスクリームの素材として注目され始めました。現存する最も古いレシピの一つは、1922年にまで遡るとされています。

初期のウベアイスクリームは、すりつぶしたウベと牛乳、砂糖、砕いた氷を混ぜ合わせて作られていました。現在の電動式とは異なり、当時は「ガラピンイェラ（garapinyera）」と呼ばれる木製の手動式アイスクリームメーカーを用いて、手作業で丁寧に撹拌することで固めていたといいます。

近年、ウベアイスクリームはフィリピン国内のみならず、国外でもその人気を飛躍的に高めています。その背景には、海外に移住したフィリピンの人々が自国の文化としてレストランなどで紹介したこと、特にハロハロの材料としての採用が挙げられます。また、他に類を見ない鮮やかな紫色はその見た目のインパクトが大きく、ソーシャルメディア上での写真映えも相まって、視覚的な魅力が拡散の一因となりました。

先述の通り、ウベアイスクリームはフィリピンを代表するデザート、ハロハロに欠かせない要素の一つです。ハロハロは、かき氷をベースに、ココナッツの果肉やサゴ、甘く煮た豆類、ジャックフルーツやマンゴーなどの南国フルーツ、フィリピン風プリンのレチェ・フラン、ナタデココ、そしてウベをペースト状にしたウベ・ハラヤなど、多種多様な具材が贅沢に混ぜ合わされた、見た目にも華やかなデザートです。これらの具材の中でも、ウベは独特の風味と鮮やかな色合いから、ハロハロに深みと彩りを与える重要な存在として位置づけられています。

多くの場合、ハロハロにはウベ・ハラヤが用いられますが、それに加えて、あるいはウベ・ハラヤの代わりにウベアイスクリームがトッピングされることも珍しくありません。また、ハロハロには無糖練乳がかけられることが一般的で、これが全体の風味をまとめ、クリーミーさを加えています。ウベアイスクリームを併用することで、さらに濃厚で滑らかな食感が楽しめるとされています。このように、ウベアイスクリームは単なる一種類のアイスとしてだけでなく、フィリピンの食文化を彩る重要な役割を担っているのです。

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