ウミユリ綱

ウミユリ綱：深海に咲く、古代からの花

ウミユリ綱は、棘皮動物門に分類される海洋生物のグループです。ウミユリやウミシダといった、植物のような姿をした生き物が含まれます。その名の通り、ユリの花を思わせる美しい姿が特徴です。

古生代の繁栄と現在の姿

ウミユリ綱は、古生代に大いに繁栄しました。当時の海には、ウミユリが群生する光景が広がっていたと考えられています。多くの化石種が発見されており、石灰岩の中にはウミユリの遺骸が大部分を占めるものもあるほどです。現在では約650種が知られていますが、古生代の盛況期に比べるとその数は大幅に減少しています。

現在、ウミユリ綱は、深海から浅海まで幅広い水深に生息しています。中でも、ウミシダ類は浅海でも見られます。

ウミユリの体の構造

ウミユリの体は、植物でいうと茎と花のような部分に分かれています。茎の部分は「柄」と呼ばれ、多数の石灰質の小骨から構成され、内部は肉質組織で満たされています。

花のような部分は「冠部」と呼ばれ、体の主要な器官が集中しています。冠部の中央には口があり、その周囲には5本の腕が放射状に伸びています。棘皮動物特有の五放射相称の体制を示しています。多くの種では、腕はさらに分岐し、多数の腕を持っているように見えます。腕の両側には羽枝と呼ばれる付属構造があり、これを使って効率的に餌を捕食します。

ウミシダ類は、成体になると茎が消失し、冠部のみで生活します。一方、有柄ウミユリ類は、成体になっても茎を持ち、海底に固着して生活します。

生態：移動するウミユリ？

ウミシダ類は、腕を使って遊泳したり、腕の下側の巻枝を使って海底を這い回ったりしながら生活します。有柄ウミユリ類は、通常は茎の末端で海底の岩などに固着していますが、茎を引きずって移動することも可能です。

驚くべきことに、有柄ウミユリ類の中には、高速で移動する種も存在します。2005年には、西インド諸島近海で、時速140mという驚異的な速度で移動する有柄ウミユリが報告されました。従来知られていた有柄ウミユリの移動速度は時速0.6m程度でしたので、これは非常に異例な発見です。

ウミユリ類は、腕と羽枝を広げ、有機物粒子を捕食します。また、他の棘皮動物と同様に高い再生能力を持ち、腕が欠損しても再生します。

ウミユリの進化：波乱万丈の歴史

ウミユリの進化史は、古生代から現在まで、幾多の変遷を繰り返してきたことを物語っています。オルドビス紀に出現したウミユリは、急速にその勢力を拡大しましたが、ペルム紀末期の大量絶滅イベントで多くの種が絶滅しました。しかし、一部の種は生き残り、中生代に再び多様化しました。

化石からは、流木などに付着して生活していたウミユリも確認されています。中には、数メートルにも達する長い茎を持つ種も存在しました。現生のウミユリ類は、多くが自由遊泳性で、短い茎または無茎です。

分類：ウミシダと有柄ウミユリ

現生のウミユリ綱は、ウミシダ類と有柄ウミユリ類に大別されます。ウミシダ類は、成体で茎を持たない自由遊泳性の種で、現生種の9割以上を占めます。一方、有柄ウミユリ類は、成体でも茎を持ち、海底に固着して生活する種で、深海に生息します。有柄ウミユリ類は、巻枝の有無や茎の断面形状などによってさらに分類されます。

ウミユリと濾過摂食の進化

ウミユリ綱の進化は、棘皮動物における濾過摂食の進化を考える上で重要な手がかりとなります。ウミユリ類と同様に、古生代には茎を持ち、濾過摂食を行うウミツボミ類が繁栄していました。しかし、ウミツボミ類はペルム紀末期に絶滅し、現在ではウミユリ類のみが、その進化の過程を知る手がかりとして生き残っています。

まとめ

ウミユリ綱は、その独特の姿と進化の歴史が魅力的な生物グループです。古生代の繁栄から、現在の多様な種へと続くその物語は、生命の歴史の壮大さを改めて感じさせてくれます。今後、更なる研究によって、ウミユリ類の生態や進化について、より深い理解が得られることが期待されます。

もう一度検索