ウラシマソウ

ウラシマソウ（浦島草）

ウラシマソウは、サトイモ科テンナンショウ属に分類される多年草で、学名は Arisaema urashima です。ナンゴクウラシマソウの亜種とする説もあります。その名の由来は、肉穂花序の先端から長く伸びる付属体が、浦島太郎の釣り竿の糸を連想させることにあります。

形態

ウラシマソウは、地下に偏球形の球茎を持ち、周囲に子球を形成します。通常、1枚の葉をつけ、成株では11～17枚の小葉が鳥足状に広がります。ただし、実生などの小型個体では3～5枚の小葉しか持ちません。小葉は先端が尖った狭卵形または長楕円形で、一般的には暗緑色をしていますが、まれに遺伝的な斑入りや「銀葉」と呼ばれる個体も見られます。葉は春から秋にかけて存在しますが、夏の早い時期に落葉することもあります。

肉穂花序は葉の下に位置し、大型の仏炎苞に包まれています。仏炎苞の色は濃紫色、緑紫色、緑色など様々で、内側には白い縞模様があります。口辺部はやや開き、舷部は広卵形で先端が尖っており、開花が進むにつれて垂れ下がります。肉穂花序の先端には、長く伸びる釣り糸状の付属体があります。花弁は無く、雄花は雄しべのみ、雌花は雌しべのみで形成されています。

性転換

ウラシマソウを含むテンナンショウ属の植物は、性転換を行うことで知られています。小型の個体は雄性として機能し、仏炎苞内部の肉穂花序に雄花群を形成します。一方、大型の個体は雌性となり、肉穂花序には雌花群が形成されます。つまり、種子から発芽した若い個体や子球由来の小型個体は雄性で、成長して大きくなるにつれて雌性に転換していきます。

分布と開花

ウラシマソウは、日本の本州、四国を中心に、北海道と九州の一部に分布しています。関東地方では4月下旬から5月上旬にかけて開花します。耐陰性が強く、乾燥を嫌うため、明るい林縁からやや暗い林の中に自生します。日照量が少ない場所では開花しにくく、雄株ばかりになりがちです。逆に、適度な日照量のある場所では、無性期、雄性期、雌性期のすべてが見られます。

結実

ウラシマソウの花粉は、キノコバエの仲間によって運ばれます。雄株の仏炎苞に入ったキノコバエは花粉を体に付け、仏炎苞の下部にある隙間から脱出します。一方、雌株の仏炎苞には脱出できる隙間がなく、キノコバエは雌花群を動き回る間に受粉させられ、最終的には脱出できずに死んでしまいます。この様子は、開花が終わった雌株の仏炎苞を切り開くと観察できます。

受粉が成功すると、秋にかけて果実が成熟します。雌花群はトウモロコシのように多数の果実をつけ、最初は緑色ですが、成熟すると朱赤色に変化します。各果実には0～数個の種子が形成されます。成熟した果実は鳥に食べられることが多いですが、そのまま地面に落ちて散布されることもあります。未成熟の果実には有毒なシュウ酸化合物などが含まれていますが、成熟すると甘くなります（ただし食用には適しません）。

種子発芽

種子は直径3～6mmの球形で、粉質です。乾燥に非常に弱く、乾燥すると発芽率が急激に低下します。発芽率は高いものの、上胚軸休眠という性質を持ちます。自然条件下では、秋に散布された種子は、冬の低温を経て地下に小さな球茎を形成しますが、地上には何も出てきません。翌年の夏と冬の低温を経て、2年目の春に3～5枚の小葉を持つ本葉を展開します。

類似種

ナンゴクウラシマソウ (Arisaema thunbergii)
ヒメウラシマソウ (Arisaema kiushianum)

脚注

天南星(テンナンショウ)の部屋

関連項目

マムシグサ

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