ウラヌス (競技馬)

ウラヌス号

ウラヌス号（1919年？ - 1945年3月28日）は、1932年のロサンゼルスオリンピック馬術大障害飛越競技で金メダルを獲得した、西竹一陸軍大佐の愛馬として知られる名馬です。フランスで生まれ、アングロノルマン種に属し、栃栗毛の美しい毛並みを持っていました。血統は不明ですが、その類まれな運動能力と、西大佐との深い絆は、多くの人々に感動を与えました。

生涯

1930年4月、西大佐がイタリアに滞在中、同僚の今村安氏からの連絡で、ウラヌス号の元の持ち主であるイタリア騎兵将校が、この馬を乗りこなせずに売りたがっていることを知りました。西大佐は、その知らせを受け、自らウラヌス号に乗ってみることを決意し、6,500伊リラ（当時のレートで100英ポンド＝1,000日本円）で購入しました。ウラヌス号は額に星型の模様があり、体高181cmという大きな馬体をしていました。性格は非常に激しく、西大佐以外には誰も乗りこなせなかったと言われています。

ウラヌス号は、ヨーロッパの大会で入賞を果たし、その実力を証明しました。そして、1932年のロサンゼルスオリンピックでは、馬術大障害飛越競技（個人）で見事金メダルを獲得しました。この時、160cmの障害を飛び越える際に、自ら馬体をよじってミスを防いだという逸話が残っています。1936年のベルリンオリンピックにも参加しましたが、結果は20位でした。しかし、その勇姿は多くの人々の記憶に残っています。

引退後、ウラヌス号は馬事公苑で余生を送っていました。しかし、第二次世界大戦中の硫黄島の戦いで西大佐が戦死すると、その悲しみに打ちひしがれるように病死しました。ウラヌス号の遺体は馬事公苑に埋葬されたという説と、陸軍獣医学校に埋葬された後に空襲で失われたという二つの説があります。西大佐が硫黄島で最期を迎えるまで身につけていたウラヌスのたてがみは、戦後アメリカで発見され、現在は北海道十勝本別町歴史民俗資料館に収められています。このたてがみは、西大佐とウラヌス号の深い絆を象徴するものとして、多くの人々に感動を与えています。

ウラヌス号と西大佐

ウラヌス号と西大佐の絆は、単なる馬と騎手の関係を超えた、深い信頼と友情で結ばれていました。西大佐は、ウラヌス号の激しい性格を理解し、その能力を最大限に引き出すことができました。ウラヌス号もまた、西大佐の指示に忠実に従い、数々の困難な障害を乗り越えてきました。二人のコンビは、まさに「人馬一体」と言えるものでした。

ウラヌス号の遺産

ウラヌス号の物語は、その驚異的な跳躍力と、西大佐との深い絆を通じて、多くの人々に感動を与えました。その功績は、馬術界だけでなく、スポーツ史にも深く刻まれています。また、ウラヌス号のたてがみが発見されたことは、戦争の悲劇の中で失われかけた、人と動物の絆を再認識する機会となりました。

参考文献

大野芳『オリンポスの使徒：「バロン西」伝説はなぜ生まれたか』文藝春秋、1984年。
眞崎甚三郎 (1934年). “「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C01002031200、大日記乙輯昭和９年(防衛省防衛研究所)」”. 国立公文書館アジア歴史資料センタ－.

関連項目

騎兵
栗林忠道
硫黄島からの手紙 - ウラヌス号と西大佐のエピソードが劇中で触れられている。

外部リンク

本別町歴史民俗資料館 - 歴史民俗資料館利用案内（本別町）

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