ウリューアン

ウリューアン期

ウリューアン期（英: Wuliuan）は、約5億900万年前から約5億450万年前に跨る地質時代区分の一つです。これは、古生代カンブリア紀の三番目の世である苗嶺世を、三つに区分したうちの最初期にあたります。先行する時代は、カンブリア紀第二世の後期を構成する第四期であり、後続する時代は、同じく苗嶺世の中期にあたるドラミアン期です。このウリューアン期は、国際的な地質時代区分としては比較的近年である2018年7月に、国際層序委員会によって正式に認定され、その境界を示す国際標準模式層断面及び地点（GSSP）も確定しました。カンブリア紀を代表する生物群として知られるバージェス動物群が栄えた時代でもあります。

層序学的定義

ウリューアン期の始まり、すなわち基底は、特定の三葉虫種であるオリクトケファルス・インディクスの最初の出現をもって定義されています。この化石の初出現面が、下位の時代との境界線として設定されています。一方、ウリューアン期の終焉は、次のドラミアン期の開始と一致し、その境界を示す示準化石としては、別の三葉虫種プティチャグノストゥス・アタヴスが用いられます。これらの特定の三葉虫種の進化段階に基づき、ウリューアン期の時間的範囲が層序学的に厳密に区切られているのです。

国際標準模式地（GSSP）

ウリューアン階の国際標準模式層断面及び地点（GSSP）は、公式には中華人民共和国貴州省の苗嶺山地にある開里累層に位置する烏溜-曽家崖セクション（八郎村近傍）に定められています。GSSPの候補地としては、最終的に認定された中国の烏溜-曽家崖セクションのほか、アメリカ合衆国のスプリット・マウンテンや、ロシア連邦サハ共和国を流れるモロド川沿いのセクションなどが検討されていました。選定された烏溜-曽家崖セクションは、烏溜採石場に露出している開里累層の地層断面であり、ウリューアン期の基底を示すオリクトケファルス・インディクスの初出現面が、この場所で明確に確認できることが決め手となりました。この時代の始まりを示す化石候補としては、三葉虫のオリクトケファルス・インディクスが第一候補とされ、同じく三葉虫のオヴァトリクトカラ・グラヌラタも第二候補として挙げられていましたが、最終的に前者の初出現が指標とされています。

生物相

この時代、特に約5億500万年前のカナダ、ブリティッシュコロンビア州にあるバージェス頁岩からは、非常に保存状態の良い化石群が産出しており、これらはバージェス動物群として世界的に知られています。バージェス動物群は、アノマロカリスやオパビニアのように、目や強固な甲殻を持つ多様な動物で特徴づけられます。これらの生物は、カンブリア爆発と呼ばれる生物の多様化現象の後期段階を代表する存在です。興味深いことに、この動物群には、約1500万年先行する中国の澄江動物群と共通する属も含まれており、カンブリア紀における生物相の連続性や地理的分布を示唆しています。バージェス動物群や澄江動物群に見られるような、明らかに複雑な形態構造を持つ生物が急速に出現した背景については、様々な仮説がある中で、視覚の獲得が生存競争を激化させ、その結果として形態の多様化や複雑化が促進されたとする説が有力視されています。ウリューアン期は、こうした初期の複雑な動物たちが生態系の中で多様なニッチを占め始めた、進化史において極めて重要な時代と言えます。

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