ウルトラ子がも

『ウルトラ子がも』(1948)：知恵とパワーで笑いを誘う子ガモの活躍

1948年10月9日に公開された『ウルトラ子がも』(原題: LUCKY DUCKY)は、アニメーション界の巨匠、テックス・アヴェリー監督によるMGM作品です。カモ猟にやって来た犬のコンビと、予想外の強さと知性を兼ね備えた子ガモの出会いを描いた、コミカルで魅力的な短編アニメーションです。

湖でのドタバタ劇

物語は、カモ猟をしようと湖にやってきた犬のコンビから始まります。午前6時、狩猟開始時刻を待ち構えていた彼らでしたが、湖を埋め尽くしていたカモの大群は、開始と同時に一斉に飛び去ってしまいます。

落胆する犬たちの頭上に、逃げ遅れた母ガモが。猟銃を乱射する犬たちをよけた母ガモは、勢い余って卵をボートに落としてしまいます。そして生まれたのが、この物語の主役である子ガモです。

この子ガモ、見た目とは裏腹に並外れたパワーと知性を持ち合わせています。犬たちの猟銃を曲げたり、ボートを操ったりと、巧みにコンビを翻弄し、次々と予想外の行動で笑いを誘います。

アニメーションならではの演出

ストーリー自体はシンプルですが、アヴェリー監督の演出が光る作品です。子ガモと犬たちの追いかけっこの中で、ボートのプロペラで湖面が削られ、水中を泳ぐ魚が見えるようになったり、丸太の橋が美しく手すり付きの橋に変化したり、岩が削られてラシュモア山のような姿になったりと、アニメーションならではの自由な表現が随所に散りばめられています。

また、モノクロとカラーの画面が交互に切り替わるなど、視覚的な面白さも満載。さらに、日本語版では、原語版にはない子ガモのセリフが加えられ、英語の説明を補完しています。一方、犬たちが銃弾で黒焦げになるシーンはカットされています。

個性豊かなキャラクターたち

本作の魅力は、個性豊かなキャラクターたちにもあります。

子ガモ: 知略とパワーで犬たちを翻弄する、本作の主人公。けたたましい笑い声で犬たちを挑発します。
犬のコンビ: アヴェリー作品でおなじみの「デカ吉チビ助」を思わせる、カモ猟にやってきたハンター。巧みにボートと猟銃を操りますが、子ガモの前では全く歯が立ちません。特にチビ助は、船外機のスターターや斧の代わりとして酷使されたり、デカ吉のくしゃみに巻き込まれてサンタクロースの姿になったりと、散々な目に遭います。
* モーターボート: エンジンのかかりにくいモーターボートですが、一度かかると驚くほどの高速で航行でき、水面や陸地を削るほどの力も持ちます。ただし、ぬかるみは苦手なようです。

その後と関連作品

本作は、TBS版『トムとジェリー』の短編として放映されたことで、日本でも広く知られるようになりました。1952年にはディック・ランディー監督による続編的な作品『かしこい子がも』が制作されています。クマのバーニーがハンター役を務めるこの作品は、子ガモと犬たちのドタバタ劇を、新たなキャラクターで再構築したと言えるでしょう。

また、カモたちのダンスは、1953年の『[かかしに御用心]]』など、他の作品にも類似したシーンが見られます。このダンススタイルは「コンガ・ライン」と呼ばれ、1942年の『バーニーの蜂蜜とり』や『トムとジェリー』作品『バラ色の人生』まで遡ることができ、1994年の映画『マスク』では、このコンガ・ラインと[[スコット・ブラッドリー]の音楽がオマージュとして登場しています。

『ウルトラ子がも』は、シンプルながらもユニークな発想と、巧みな演出で観る者を飽きさせない、まさにアヴェリー監督の才能が光る傑作と言えるでしょう。

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