ウルム市電

ウルム市電の概要

ドイツ南部の都市ウルムでは、シュタットベルケ・ウルム/ノイウルム（SWU）の子会社であるSWU交通が路面電車「ウルム市電（ドイツ語: Straßenbahn Ulm）」を運営しています。ドナウ川沿いの街の公共交通を支える存在です。

波乱の歴史

ウルムに路面電車が開業したのは1897年5月です。当初はウルム市内とドナウ川対岸のノイウルムを結び、1927年には4系統まで発展しました。

しかし第二次世界大戦で甚大な被害を受け、ノイウルムへの路線は復旧せず廃止。戦後のモータリゼーションで路線は縮小し、1964年以降はわずか1系統、全長5.6キロメートルのみとなり、西ドイツ最短に。この状態はドイツ再統一後の2000年代後半まで続きました。

近代化と新たな展開

厳しい時代でも、車両や設備の更新は続けられました。1980年代には他都市からの譲渡車GT4形が、2000年代には超低床電車コンビーノが導入され、旧型車を置き換えました。

ドイツ再統一後、近代化と拡張が模索されます。1999年に軌間変更含む計画は否決されたものの、1号線の延伸が進められ、2009年3月にはウルム北部のボーフィンゲン地区へ5.5キロメートルが開通しました。起点ドナウハレ電停も移設されています。

続いて、ウルム北部「科学都市」や南西部のクーバーグ地区へ向かう2号線の建設が2015年10月に始まりました。沿線開発による需要増を見込んだものです。2018年12月から営業運転を開始しました。2号線建設に合わせ、ドイツ鉄道の線路を跨ぐキレンヘスブルク橋が建設され、路面電車、自転車、歩行者が利用可能です。この橋は設計が高く評価され、2019年に土木工学賞を受賞しました。

現在の運行と車両

現在、ウルム市電では以下の2系統が運行されています。

現役車両は全てバリアフリー対応の超低床電車で、ウルムゆかりの著名人にちなんだ愛称が付けられています。

主な現有車両は以下の通りです。

コンビーノ: シーメンス製の片運転台式5車体連接車。2003年7月営業開始。1号線延伸に合わせ2008年に2両が増備され、急勾配対策としてブレーキ強化や自動列車制御装置搭載が行われました。既存車両も同様に改造されています。現在10両が在籍します。

アヴェニオM: シーメンス製の5車体連接車で、2号線開業に合わせて2018年から導入。車体構造が見直され、軽量かつ高強度な全溶接アルミ車体を採用しています。2号線開業前の2018年8月から順次運用に入り、当初12両が導入されました。利用客増加に対応し、2020年に追加発注された6両が2023年に導入され、合計18両体制となっています。さらに輸送力増強のため、2024年5月に追加車体が発注され、2027年から2028年にかけて7車体連接車への改造が予定されています。

ウルム市電でかつて活躍した車両の一部は、ウルム/ノイウルム地方交通機関友の会（UNF）の支援により動態保存されています。

1号車: 1957年製ボギー車。
10号車: 元シュトゥットガルト市電のGT4形連接車（1964年製）。
* 16号車: 1910年製2軸車。1980年に動態復元。

今後の展望

ウルム市電では、ドナウタール地区を経由し、ヴィープリンゲン地区やノイウルム方面へ向かう路線の延伸計画が提案されています。2019年時点ではルートの検討段階にあり、実現すればかつてのノイウルムへの路線が復活する可能性もあります。

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