ウルヴァリン (訓練空母)

概要

ウルヴァリン（USS Wolverine, IX-64）は、第二次世界大戦中にアメリカ海軍が運用した訓練用航空母艦です。1941年12月の真珠湾攻撃を契機に太平洋戦争が開戦し、アメリカは航空母艦の増強と同時に、搭乗員の育成を急務としました。しかし、戦況は厳しく、熟練度の低い搭乗員のために貴重な正規空母を訓練に投入することは困難でした。そこで、商船を改造して発着艦訓練専用の空母を建造する案が浮上しました。

当時、ドイツのUボートがアメリカ大西洋岸に出没しており、外洋での訓練は危険を伴いました。そこで、五大湖で運航されていた客船を改装するアイデアが採用されました。五大湖はUボートの脅威がなく、外洋のような波浪の影響も少ないため、未熟な搭乗員でも安全に訓練を行うことができました。1913年製の外輪客船シー・アンド・ビューとグレーター・バッファローが改装対象に選ばれました。アメリカ海軍は1942年3月12日にシー・アンド・ビューを取得し、同年8月12日に改装を完了、「ウルヴァリン（IX-64）」として就役させました。搭乗員の訓練は1943年1月に開始されました。なお、グレーター・バッファローは1943年5月8日にセーブルとして就役しています。

艦形

ウルヴァリンは、蒸気機関推進の外輪客船シー・アンド・ビューをベースに改造されました。主甲板より上の構造物はすべて撤去され、船体を大きく覆う飛行甲板が新設されました。煙路は右舷側に移設され、4本の煙突が直列に並びました。この独特な外観は、改装空母でありながらも正規空母のような印象を与えました。主機関はそのまま利用され、石炭専焼缶4基とレシプロ式機関1基で両舷の外輪を駆動しました。最大速度は18ノットでしたが、着艦・発艦訓練には十分な性能でした。本艦は訓練空母ではなく、雑役艦の一種として扱われ、IX-64と命名されました。ウルヴァリンは合計5万1000回の着艦訓練を記録し、多くのパイロットを育成しました。しかし、第二次世界大戦終結後の1945年に他の訓練空母と共に退役し、1947年に解体処分されました。

関連項目

アメリカ海軍航空母艦一覧
セーブル (USS Sable, IX-81))

外部リンク

history.navy.mil: USS Wolverine - ウェイバックマシン（2004年6月21日アーカイブ分）
USS Wolverine
* airclassics.com: Sunken Grumman F4F-3 Wildcat raised from lake Michigan

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