ウーヴェルドーズ

ウーヴェルドーズ：ハンガリーの弾丸が駆け抜けた軌跡

2005年、イギリスで生まれたサラブレッド、ウーヴェルドーズ。その競走馬としてのキャリアは、予想をはるかに超える輝かしいもの、そして波乱に満ちたものだった。

競売市場では、小さな体格ゆえに低い評価を受け、わずか2100ポンド（約50万円）という低価格でハンガリーの鉄鋼会社経営者、ミコツィ・ゾルタン氏に落札された。ハンガリーへと渡ったウーヴェルドーズは、リバルツキ・サンドル厩舎で競走馬としての道を歩み始める。

2007年のデビュー戦は、16馬身差という圧勝。その後も中欧諸国の短距離レースを席巻し、6連勝という輝かしいスタートを切った。その活躍は、ハンガリー国内で「ドージー (Dózi)」の愛称で親しまれ、イギリスでは「ブダペストの弾丸 (Budapest's Bullet)」と称賛されるほどだった。

2008年には、ドイツ、フランスへと活躍の場を広げる。ドイツの準重賞競走を圧勝した後、G3ロトハンブルクトロフィー、G2ゴルデネパイチェと重賞を連勝。そして、フランスのG1アベイ・ド・ロンシャン賞に挑む。G1優勝馬4頭がひしめく中、ウーヴェルドーズは2番人気に支持され、会場には多くのハンガリーからの応援者が詰めかけた。しかし、発走時のトラブルにより、再レースが決定。激しい疲労を考慮し、ウーヴェルドーズ陣営は再レースへの出走を辞退するという、物議を醸す出来事が起きた。

その後も圧勝劇は続き、イタリアのG3カルロ&フランチェスコアロイージ賞を制し、11連勝でシーズンを終えた。この活躍は、世界サラブレッドレーティング制度におけるランクインという、ハンガリー調教馬初の快挙に繋がった。

2009年には、グローバルスプリントチャレンジ制覇を目指し、イギリス遠征が計画された。地元ハンガリーでのレースではコースレコードを樹立する圧勝劇を見せたものの、左前脚の炎症、そして右前脚への炎症発生により、イギリス遠征は中止となった。フランスでのリハビリ中に状態が悪化、帰国することになったが、その過程で、フランスのスタッフに対するミコツィ氏からの強い批判が飛び出した。さらに、同年にはミコツィ氏がルーマニアで逮捕される事件も発生するなど、私的な問題もウーヴェルドーズのキャリアに影を落とした。

2010年には、ロイヤルアスコットへの参戦が検討されたものの実現せず、スロバキアとハンガリーで勝利を収め、連勝記録を伸ばしたが、ドイツのG2ゴルデネパイチェではゲート入りを嫌がり、大敗を喫した。

2011年には、ドイツ、イギリス、イタリアと転戦。テンプルステークスでは7着と敗れたものの、カルロ＆フランチェスコアロイージ賞で再び勝利を飾る。

2012年、ドバイミーティング参戦を目指したが、怪我のため断念。その後、回復の兆しが見られたものの、再び腫れが再発し、引退を余儀なくされた。2015年、種牡馬として活躍していた最中、疝痛のため死亡した。

ウーヴェルドーズの短い競走生活は、数々の劇的な勝利と、惜しまれる敗北、そして様々な困難に彩られていた。低価格で購入されたハンガリー馬が、世界の舞台で名を馳せたその生涯は、ハンガリー競馬界にとって大きな誇りであり、同時に、多くの記憶と教訓を残したと言えるだろう。その名は、伝説の名馬キンチェムに続く、ハンガリー競馬史に輝く一ページとして刻み込まれた。

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