エアチェック

エアチェックの概要

エアチェック（air check）とは、ラジオやテレビの放送コンテンツを受信し、テープレコーダーやラジカセなどで録音する行為を指します。また、録音したコンテンツそのものや媒体についてもこの用語が用いられます。

エアチェックの歴史

英語での「エアチェック」は、「On Air」（オンエア）された内容を後で確認するために録音することが由来です。もともとこの行為は、放送事業者が生放送の番組をアーカイブとして保存するためや、スポンサーが契約に基づくコマーシャルの放送をチェックするために行われていました。しかし、次第に一般の視聴者が好きな番組や楽曲を録音する意味が強くなり、語義が拡張されていきました。

麻倉怜士によれば、エアチェックには「タイムシフト」「パッケージ化」「永久保存版」としての役割があり、放送の質向上にも寄与する重要な行為であるとされています。法的にはエアチェックは著作物の複製にあたるため、私的利用の範囲を超えて他人に販売することは法律的に問題があります。

日本におけるエアチェックの歴史

日本でのエアチェックは古くから行われており、1944年には東京都立工芸学校の学生がアセテート盤で大本営発表を録音した事例が残っています。1959年にFM放送が実験的に開始され、1969年には本格的な放送が始まると、FM放送の音質の良さからエアチェックの対象もFM局に移行しました。ほとんどの人々はオープンリールまたは後に普及したカセットテープを利用し、特に1970年代にはFM音楽番組の録音が盛んになりました。

音楽の需要が高まる中、エアチェックは庶民にとってレコードなどの高価な音楽媒体に代わる手段として重宝されました。民間放送局の増加により、FM情報誌も創刊され、番組のプレイリストを参考にエアチェックを行う人々が増えました。1990年代に入ると、CD-RやMD（ミニディスク）などのデジタル録音媒体も登場し、エアチェックのスタイルが変化していきました。

エアチェックの衰退と現在

1980年代には、レンタルレコード店が急増し、リクエスト番組が主流になると、エアチェック文化が衰退していきました。1990年代にはFM情報誌の発行部数が減少し、かつての盛大なエアチェック文化は薄れていきましたが、音楽を低価格で手に入れる手段として残し続ける人々もいました。

最近では、インターネットラジオやデジタル録音技術の普及により、エアチェックのやり方が変わりつつあります。radikoやNHKのネット同時放送サービスを利用することで、録音したい番組を容易にキャッチできる環境が整っています。

テレビ放送のエアチェックも、最初は音声だけの記録から始まり、ビデオ録画機やデジタル録音媒体の普及により、その様式が大きく変わりました。現在ではハードディスクやブルーレイなどを用いて、高画質のまま録画できるようになり、家庭で簡単にエアチェックが行えるようになっています。

おわりに

エアチェックは、その発展とともに技術や利用状況が変化してきましたが、人々の生活における「放送」を収集する手段としての意義は今もなお残っています。音楽や映像とともに過ごす時間を豊かにするエアチェック文化は、これからも形を変えながら受け継がれていくでしょう。

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