オープンリール

オープンリールとは

オープンリール（Open Reel）は、磁気テープを剥き出しのリールに巻いて使用する記録方式です。リールがカートリッジやカセットに内蔵されている方式と比較して、テープやリールが直接露出している点が特徴です。そのため、使用時にはテープをリールから引き出し、録音・再生ヘッドやテープ送り機構に手動でセットする必要があります。

この方式は、初期の磁気レコーディング技術として広く利用されていましたが、後にカセットテープなどの利便性の高い方式が登場すると、それらと区別するために「オープンリール」という名称が使われるようになりました。オープンリールを使った記録・再生装置は、「オープンリール式テープレコーダー」や「オープンリール式ビデオテープレコーダー」と呼ばれます。

オープンリールは、英語圏では「Reel-to-reel」と呼ばれることが多く、「Open Reel」という表現は比較的少ないです。ドイツ語圏では「Tonband」と呼ばれています。

オープンリールの特徴

オープンリールは、リールが剥き出しであるため、以下のような特徴があります。

手動でのセットアップ: テープをリールから引き出し、録音・再生ヘッドやテープ送り機構に手動でセットする必要があり、カセットテープなどに比べて取り扱いが煩雑です。
音質・画質の高さ: テープの移動速度が速く、記録容量が大きいため、高音質・高画質での記録が可能です。
編集の容易さ: テープを直接切って繋ぐことができるため、編集作業が比較的容易です。また、音源の頭出しも分かりやすいという利点があります。
外部環境の影響: テープやヘッドが露出しているため、埃などの影響を受けやすく、使用環境によって音質が変わることがあります。

オープンリールは、主に音声用（テープレコーダー）、映像用（ビデオテープレコーダー）、コンピュータ用データレコーダー（MT装置）、計測用データロガーなどに利用されました。

オープンリールの歴史

オープンリール方式は、磁気レコーディングの黎明期から使われており、初期には鋼鉄製のテープを使用したものもありました。1930年代には、ドイツのマグネトフォンによって磁気テープ方式が実用化されました。

1950年代までは、家庭用録音機として2トラック1チャンネルモノラル機が普及し、音楽ソフトもレコードと同様にオープンリールで販売されていました。しかし、1960年代にカセットテープが登場すると、オープンリールは次第に衰退し、カセットテープが主流となりました。

オープンリールは、その手動操作性から、ビートルズがテープ逆回転のテクニックを楽曲に取り入れるなど、音楽制作の現場でも活用されました。

オープンリールの衰退

消費者向け用途では、1970年代にはカセットテープが主流となり、映像用やパソコン用もカセットタイプが主流となりました。業務用では、音質を重視してオープンリールが使われ続けましたが、1980年代にはVHSなどのカセット式やカートリッジ式テープに取って代わられました。2000年代に入ると、ディスク装置の普及やDAWの発展によって、オープンリールはほとんど使われなくなりました。ただし、プロ向け音声用オープンリールは、ソニーと三菱のデジタルレコーダーが最後の機器として使用されました。

現在では、NHKの公開番組で、カラオケ音源としてオープンリールが使用されるケースがわずかに残っています。これは、オープンリールが動作状況を確認しやすく、スタートのタイミングを把握しやすいためです。

オープンリールの種類

音声用

オープンリールの音声用アナログ記録方式では、テープ幅が1/4インチ、1/2インチ、1インチ、2インチなどがあります。最も一般的なのは幅約6mm（1/4インチ）のテープで、業務用では「6ミリ」と呼ばれることもあります。テープのトラック数には、2トラック、4トラックなどがあり、ステレオ録音やマルチトラック録音に使用されました。

タイムコードやパイロットトラックを記録する機能を持つ機種もありました。テープの走行速度は、4.75cm/sから76cm/sまであり、速度が速いほど高音質になります。テープの厚さも異なり、薄いテープほど長時間録音が可能ですが、機械的強度が低く、音質も低下する傾向があります。

デジタル記録方式では、PCMデジタル録音が開発されるまでは、アナログオープンリール方式が主流でした。初期のデジタル録音では、オープンリールの2インチビデオテープレコーダーが用いられました。デジタル記録方式には、PD方式、DASH方式、3M-DMS方式などがあります。

映像用

放送用VTRとしては、初期の4ヘッドVTRや1インチCフォーマットVTRなどがありました。家庭用としては、1960年代後半から70年代前半にかけて1/2インチのものが登場しましたが、価格が高く、普及には至りませんでした。初期のハイビジョンVTRも1インチオープンリール型でした。

コンピュータ用

コンピュータ用としては、1/2インチ9トラックの磁気テープ記録装置（MT装置）が、メインフレームやミニコンピュータの標準的な補助[[記憶装置]]として、1960年代から1990年代頃まで使われていました。テープの長さや記録密度には複数の規格があり、大型の装置にはオートスレッディング機構が搭載されていました。

コンピュータ用磁気テープは、現在ではカセット方式が主流ですが、過去のデータを読み出すために、オープンリール方式の装置が使われることもあります。

オープンリールが登場する映像作品

オープンリールは、様々な映像作品に登場しています。

『スパイ大作戦』では、指令伝達の手段としてオープンリールのテープが登場します。
SF作品では、巨大なオープンリールのテープドライブが、科学力を象徴するアイコンとして用いられます。
映画『ミッドナイトクロス』では、主人公がナグラ社のオープンリールレコーダーを使用します。
映画『パルプ・フィクション』では、登場人物が自宅でオープンリールで音楽を聴くシーンがあります。
映画『地獄の黙示録』では、ワーグナーの楽曲をオープンリールで流しながら、ヘリコプター部隊が攻撃を行うシーンが描かれています。
『西部警察』では、捜査課の無線機器棚に組み込まれたオープンリールが登場します。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』では、楽曲の録音時にオープンリールでオーバーダビングを繰り返す様子が描かれています。

関連項目

音響機器
デンスケ ([[録音機)]]
ドイツ工業規格 (Deutsche Industrie Normen)
全米放送事業者協会
国際電気通信連合無線通信部門
SMPTE 米国映画テレビ技術者協会
AES (Audio Engineering Society) 音響技術に関する標準化機関
デルマ - オープンリール編集用鉛筆
レコードプレーヤー
デッキ
EEポジション - オープンリール用高音質フォーマット
エルカセット - 1/4インチテープをカセットに納めたメディア
中銀カプセルタワービル - 各部屋にオープンリールが内装されていた

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