エアバッグ (レディオヘッドの曲)

レディオヘッド『エアバッグ』楽曲解説

『エアバッグ』は、イギリスのロックバンド、レディオヘッドの3rdアルバム『OK コンピューター』の1曲目を飾る楽曲であり、EP『Airbag/How Am I Driving』のリードトラックとしても知られています。

楽曲の成立

完成されたサウンドからは想像しにくいですが、この曲は元々アコースティックギターの弾き語りから生まれました。1995年頃には既にアンプラグドのライブで演奏されており、当時のメンバーの音楽的な知識や素養が凝縮された一曲と言えるでしょう。最終的な仕上がりにメンバーは非常に満足し、トム・ヨークはミキシングを大音量で聴きながら陶酔し、コリン・グリーンウッドは「新作はぶっ飛んだレディオヘッドだ」と周囲に語っていたそうです。トム自身も「OK コンピューターの志向を表している曲」と述べています。

サウンドプロダクション

『エアバッグ』のアレンジは、多岐にわたる音楽性が融合した点が特徴です。ジョニー・グリーンウッドの音楽的素養が垣間見られる弦楽器風のイントロリフ、DJシャドウなどのトリップホップからの影響を感じさせるサンプリングされたドラムループ、明滅するように展開されるダブ的なベース、そして楽曲全体の雰囲気を決定づける音響的なギターサウンドなど、様々な要素が組み合わされています。メロディーには意図的に中東音階が使用されている点も注目に値します。

イントロでは、左右のチャンネルに歪んだギターと弦楽器を配置することで、独特の響きを生み出しています。エド・オブライエンによる印象的なギターサウンドは12弦ギターによるもので、トムの複雑なストロークと組み合わさることで、音響的で浮遊感のある音像を作り上げています。中盤のギターソロでは、シンセサイザーのような音色が聴こえますが、これはピッチシフターやテープの逆回転、ワーミーペダルなどを駆使したもので、ベース、ドラム、ギター以外の楽器は一切使用されていません。

歌詞の世界観

歌詞は、「次の世界大戦で、俺は生まれ変わる」という高揚感のあるフレーズから始まり、ジャガーノート神（トレーラーと、宇宙を救うために戻ってきた自身を結びつけている）の暗示などを交えながら、誇大妄想的に展開していきます。トムの実体験もインスピレーションの源となっていますが、『OK コンピューター』の他の楽曲と同様に、基本的にトムは架空のキャラクターを演じきっています。同アルバムの他の曲と比較すると、宣告的でぶっきらぼうな歌い方が際立っており、その架空の人格をより鮮明に表現することに貢献しています。

Mojo誌のキース・オールディンは、この曲を「アルバムの中で最もポジティブな方向性を持つ曲だが、そこで歌われているのは「自動車事故に遭った時にエアバッグで助かった」という、あまりにも皮肉的なポジティブさである」と評しています。

『エアバッグ』は、レディオヘッドの音楽的な実験精神と、深遠な歌詞世界が融合した楽曲であり、『OK コンピューター』という傑作アルバムの幕開けを飾るにふさわしい一曲と言えるでしょう。

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