エイブラハム・カウリー

エイブラハム・カウリー：17世紀イングランドを代表する詩人

エイブラハム・カウリー(1618年-1667年)は、17世紀イングランドを代表する詩人、劇作家、そして随筆家として知られています。ロンドン裕福な家庭に生まれた彼は、幼少期から詩作に才能を示し、14歳で詩集を出版するなど、類まれな早熟ぶりを発揮しました。ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ在学中は、ダビデ王を題材とした叙事詩など多くの作品を生み出しました。

清教徒革命と亡命生活

しかし、カウリーの生涯は清教徒革命によって大きく変わります。熱心な王党派、国教会派であった彼は、革命派の台頭と共にトリニティ・カレッジを追われることとなり、フォークランド卿の庇護の下、オックスフォードで身を潜める期間を経て、女王と共にフランスへ亡命しました。パリで12年間を過ごし、王政復古を待ちました。

王政復古と隠棲

1660年、待ち望んだ王政復古によってイングランドへ帰国したカウリーでしたが、期待していたほどの地位を得ることはありませんでした。失望した彼は、サリー州チャーツィーの田園地帯に隠棲し、静かな余生を送ることを選びます。1667年、農場労働の監督中に風邪をこじらせ、生涯を終えました。ウエストミンスター寺院に埋葬されています。

詩作と評価

カウリーは『詩集』(1656年)、『近作詩集』(1663年)、『詩文集』(1668年)など多くの作品を残しました。彼の詩は機知に富み、洗練された表現で知られています。しかし、その奇抜な発想は、後世のサミュエル・ジョンソンなどから「形而上詩的な奇想」として批判されることにもなりました。詩想を過度に追求した結果、普遍性や荘厳さが失われたというのです。

にもかかわらず、カウリーの詩は当時の詩壇に大きな影響を与え、文学史における彼の重要性は揺るぎないものとなっています。特に頌歌においては、古代の形式にとらわれず、独自のスタイルを確立。その影響は、後の英国頌歌にまで及んでいます。カウリーは古代頌歌のスタンザの区分の理解がないまま、高尚で激情に満ちた詩であると捉え、結果として英国の頌歌は各行の長さと韻律がまちまちなスタンザが続く詩というスタイルが一般的になったのです。

まとめ

エイブラハム・カウリーは、激動の時代を生きた詩人でした。王党派としての立場、そして詩人としての揺るぎない信念、そして晩年の隠遁生活。彼の生涯は、時代の変遷と個人の葛藤、そして芸術の創造という複雑な要素が絡み合ったドラマと言えるでしょう。彼の詩は、現代においても読み継がれ、17世紀イングランド文学史における重要な一端を担っています。彼の作品を通して、当時の社会情勢や文化、そして詩人の内面世界に触れることができるのです。彼の功績は、単なる詩作にとどまらず、後の詩人たちへの影響という形で、現在まで続いています。

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