エイブラハム・リンカーン (大尉)

エイブラハム・リンカーンの生涯

エイブラハム・リンカーン（1744年5月13日 - 1786年5月）は、アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンの祖父であり、アメリカ独立戦争期に民兵大尉として活躍しました。彼の生涯は、アメリカの開拓時代と独立戦争という激動の時代を背景に、家族の歴史と密接に結びついています。

生い立ち

リンカーン家の祖先は、イングランドから移住したサミュエル・リンカーンです。エイブラハムの父ジョン・リンカーン（1716年 - 1788年）は、ニュージャージー植民地で生まれ、ペンシルベニア植民地で育ちました。ジョンは自給自足の農業を営みながら、織物や貿易にも携わっていました。彼は再婚しており、先妻の子供たちにはモルデカイ・リンカーン邸が残されました。

1743年、ジョンはペンシルベニア州ランカスター郡のカナーボンタウンシップで、エノク・フラワーズの娘レベッカ・モリス（1720年 - 1806年）と結婚しました。レベッカは未亡人であり、幼い息子ジョナサン・モリスがいました。エイブラハム自身は、1744年5月13日にペンシルベニア州バークス郡で、ジョンとレベッカの長男として誕生しました。彼は9人兄弟の長男で、他にハンナとリディア（双子、1748年生）、アイザック（1751年生）、ジェイコブ（1750年生）、ジョン（1755年生）、サラ（1757年生）、トーマス（1761年）、レベッカ（1767年生）がいました。

経歴

エイブラハムは、製革業の貿易を学び、後に弟のジョンを見習いとして迎えました。当時のバークス郡の著名な製革業者ジェームズ・ブーン（1709年 - 1785年、ダニエル・ブーンのおじ）が近所に住んでいたことが、彼の職業選択に影響を与えました。ジェームズ・ブーンの娘アンは、ジョン・リンカーンの異母弟と結婚しており、この繋がりがリンカーン家の職業と結びついています。

1768年、父ジョンはバージニア植民地シェナンドー・バレーに土地を購入し、オーガスタ郡（現ロッキンガム郡）リンビルクリークの約600エーカー（2.4平方キロメートル）の土地に定住しました。1773年、エイブラハムは父から弟アイザックと共に土地を分与され、両親の家からリンビルクリークを隔てた場所に家を建てました。

エイブラハムは1772年にメアリー・シプリーと結婚し、その後、リンビルクリークのアレクサンダー・ヘリング（1708年 - 1778年）とアビゲイル・ハリソン（1710年 - 1780年）の娘バテシバ・ヘリング（1742年 - 1836年）と再婚しました。バテシバとの間には、モルデカイ・リンカーン、ジョサイア（1773年頃生）、メアリー・リンカーン・クルーム、トーマス・リンカーン、ナンシー（1780年生）の5人の子供がいました。

アメリカ独立戦争が勃発すると、エイブラハムはオーガスタ郡民兵大尉を務めました。1778年にロッキンガム郡民兵が組織されると、その大尉に任命されました。彼は隣人60人を指揮下に置き、バージニア州知事の命令を受けて進軍しました。彼らはラクラン・マッキントッシュ将軍の指揮下で、1778年の秋と冬にペンシルベニア州のマッキントッシュ砦とオハイオ州のローレンス砦の建設を支援しました。

1780年、エイブラハムはミルクリークの土地を売却し、1781年にケンタッキー州ジェファーソン郡（当時はバージニア州）に移住しました。ルイビルから約32キロメートル離れた場所に定住し、その地域には当時、オハイオ川を隔ててインディアンが居住していました。入植者は安全のため、辺境の砦の近くに住み、警報とともに避難していました。エイブラハムはフロイドフォークのヒューズ駅郊外に住み、土地を開拓し、トウモロコシを植え、小屋を建て始めました。彼は少なくとも5544エーカーの豊かな土地を所有していました。

死

1786年5月のある日、エイブラハムは3人の息子と畑で作業中、近くの森から銃撃され、倒れました。長男モルデカイは弾が装填された銃のある小屋に走り、次男ジョサイアはヒューズ駅に助けを求めました。末っ子のトーマスはショックで立ち尽くしていました。モルデカイは小屋から森に出てきたインディアンが父の遺体に近づくのを見て、慎重に狙いを定めて胸を撃ち、殺害しました。

エイブラハムは小屋の脇に埋葬され、現在、その場所はイーストウッド近くのロングランバプテスト教会と墓地となっています。1937年には、墓地に追悼碑が設置されました。残された妻バテシバと5人の子供たちは、インディアンの攻撃の危険が少なく、国が定住を支援していたワシントン郡に引っ越しました。

法律に基づき、長男モルデカイはエイブラハムの財産の3分の2を、妻バテシバは3分の1を相続しました。他の子供たちには遺産はなく、特に末っ子トーマスは学校に通いながらも働くことを余儀なくされ、苦労しました。

後年、トーマスは息子のエイブラハム・リンカーンに、その日起こった出来事を詳細に語りました。エイブラハム・リンカーンは後に「インディアンによる父の死」という物語を執筆し、「そして、当時14歳だった叔父のモルデカイがインディアンを殺したという伝説は、他のどの伝説よりも私の心と記憶に強く刻まれている」と述べています。

参考文献

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