エイベル・タスマン国立公園

ニュージーランド南島の北端、タスマン地方に広がるエイベル・タスマン国立公園は、国土に点在する14の国立公園の中で最もコンパクトな面積を誇ります。公園名は、1642年にヨーロッパ人として初めてニュージーランドに到達したオランダの航海家、エイベル・タスマンの名に由来しています。

地理と自然景観

この国立公園の大きな特徴は、変化に富んだ美しい海岸線です。いくつもの入り江と黄金色の砂浜が続き、そのすぐ背後には緑豊かな山々が迫ります。また、沖合には点々と島々が浮かび、公園の景観に彩りを添えています。公園の北側はゴールデン湾、東側はタスマン湾に面しており、豊かな海洋環境も魅力の一つです。

公園の歴史

ヨーロッパ人がこの地に到達する以前から、この地域ではマオリの人々が少なくとも500年にわたり季節的な生活を営んでいました。彼らは海や河口、森から食料を得たり、サツマイモを栽培したりしていました。1642年 12月18日、エイベル・タスマンが初めてこの地に上陸した当時、ここにはガティ・トゥマタコキリ族が暮らしていました。

ヨーロッパからの入植者が現在の国立公園周辺に入り始めたのは1855年頃からです。彼らは主に森林を伐採し、家や船を作るために木材を利用しましたが、その資源は比較的早く枯渇しました。このような状況に対し、鳥類学者であり作家でもあったペリーヌ・ミライス・モンクリーフを中心に、貴重な自然を守るための保護運動が巻き起こりました。

その熱意が実を結び、エイベル・タスマンのニュージーランド到達300周年を記念する形で、1942年 12月18日にエイベル・タスマン国立公園が開園しました。オランダ女王ウィルヘルミナが公園の保護者となり、開園式にはその代理が出席しました。ペリーヌ・ミライス・モンクリーフは、その後1974年まで公園の責任者を務め、保護活動に尽力しました。

生態系

公園の森林植生の中心はブナであり、様々な種類の樹木とともに豊かな緑を形成しています。

公園では多種多様な野鳥を観察することができます。森林部には、エリマキミツスイ（ツウィ）やニュージーランドミツスイ、ニュージーランドオウギビタキ、ニュージーランドバトなどが生息しています。河口や湿地帯では、セイケイ（オーストラリアセイケイ、プーケコ）の姿が見られます。沖合の島々周辺では、オーストラリアシロカツオドリ、ノドジロムナオビウ、ヒメアジサシ、コガタペンギンなどの海鳥が観察できます。特にトンガ島周辺はトンガ島海洋保護区に指定されており、そこにはニュージーランドオットセイの大規模な繁殖地があります。

アクティビティ

エイベル・タスマン国立公園では、豊かな自然を満喫できる様々なアクティビティが楽しめます。

トレッキング（トランピング）: 公園の海岸線に沿って歩く全長54キロメートルの「エイベル・タスマン・コースト・トラック」は、ニュージーランドを代表する長距離遊歩道「グレート・ウォークス」の一つに数えられています。その他にも、所要日数3日、全長41キロメートルの「インランド・トラック」など、様々なコースが整備されています。
マリンアクティビティ: 美しい海岸線を活かしたヨット、ボート、カヤックなども人気です。
* その他のアクティビティ: 公園内にはマウンテンバイク用の専用コースが2ヶ所あります。また、指定されたエリアでは免許を取得していれば、鹿、豚、ヤギなどの狩猟を行うことも可能です。

エイベル・タスマン国立公園は、その美しい景観と多様な生態系、そして豊富なアクティビティによって、訪れる人々に忘れられない体験を提供しています。

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