エウモルポス

エウモルポス

エウモルポス（古希: Εὔμολπος, Eumolpos）は、ギリシア神話の重要な人物で、「美しく歌う者」という名を持つトラーキアまたはアッティカ地方のエレウシスの伝説的な王です。彼の血統はポセイドーンとキオネーの子であり、音楽家ピラムモーンまたは詩人ムーサイオスの子とも言われています。

誕生と成長

エウモルポスの母、キオネーはアテーナイの王族の出身であり、アテーナイ王エレクテウスの娘であるオーレイテュイアと関連があります。彼女は北風の神ボレアースに誘拐され、4人の子供をもうけます。キオネーはポセイドーンとの関係からエウモルポスを出産しましたが、彼女はこのことを隠すために自ら海に捨ててしまいます。ポセイドーンは彼を救い、娘であるベンテシキューメーに託して育てさせました。しかし、エウモルポスが成長すると、彼はベンテシキューメーの姉妹を襲い、結果的に彼とその息子イスマロスは追放されることとなります。

エレウシースの秘儀

追放された後、エウモルポスはトラーキアの王テギュリオスに身を寄せ、彼の娘と息子の結婚が実現しますが、彼の陰謀が発覚しエレウシースに逃げ込みます。エレウシースでは、彼は人々と親密な関係を築き、他の王たちとともに女神デーメーテールから秘儀を授けられることになります。彼は次第にエレウシースの秘儀の創始者と見なされるようになります。

アテーナイとの戦争

その後、エレウシースとアテーナイの間で戦争が起き、エウモルポスはトラーキアの軍を率いてエレウシースを支援します。アテーナイの王エレクテウスは必勝のために自らの娘を生贄に捧げるという神託を受け、これによりエウモルポスとの戦闘で命を落とすことになります。この悲劇的な結末は、エウモルポスの父であるポセイドーンによるエレクテウスへの報復を引き起こし、エレクテウスの館は破壊されます。エウモルポスが死んだ後、エレウシースはアテーナイに従属することになりますが、秘儀は保持され続けます。

子孫と秘儀の継承

エウモルポスの後、エレウシースの秘儀はエウモルピダイ家とケーリュケス家によって受け継がれました。彼の子孫に関する伝承は複雑で、エウモルポスの家系が秘儀の最高位神官を務めたことが記録されています。更に、ムーサイオスについての異なる伝承があり、彼はエウモルポスの子または子孫とされることもあります。

音楽と詩作の才能

音楽においてもエウモルポスは類まれな才能を持っていたとされ、ディオドロスやヒュギーヌスが彼の作った詩や歌について言及しています。彼はアルゴスで音楽家ピラムモーンに師事し、ヘーラクレースのために歌を教えたといいます。

備考

古代トラーキアのフィリッポポリスは、エウモルポスの名に由来してエウモルピアまたはエウモルピアダと呼ばれていました。その文化的背景は彼の伝説と密接に結びついていると考えられています。

エウモルポスは古典ギリシャの文献では非常に重要な人物として語られており、様々な神話や伝承の中で彼の名前は生き続けています。

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