エウリュメドーン

エウリュメドーン（古希: Εὐρυμέδων）は、古代ギリシアの神話世界に登場する複数の人物や巨人の名である。この名は「広く支配する者」といった意味を持ち、一部の研究者は「海の支配者」と解釈している。この名前を持つ存在は、文献によって伝承が大きく異なるため、それぞれ分けて説明されることが多い。主要な人物としては、巨人の王、クレータ島の王ミーノースの子、そしてミュケーナイの王アガメムノーンに仕えた御者が知られている。

ギガースの王エウリュメドーン

巨人族（ギガース）の王とされる存在。彼は娘であるペリボイアの父であり、ペリボイアは後に海神ポセイドーンとの間に、パイアーケス人の初代王となるナウシトオスをもうけた。エウリュメドーンは非常に傲慢な性格であり、その行いが自らの治める民を破滅に追い込み、最終的には自身もまた滅亡したと伝えられている。さらに、アレクサンドリアの詩人エウポリオーンは、通常とは異なる伝承を伝えている。それによると、エウリュメドーンは女神ヘーラーがまだ結婚する前に彼女を犯し、その結果、神々に火をもたらすことになるプロメーテウスが生まれたという。これは他の多くの神話におけるプロメーテウスの出自とは異なる異説である。

ミーノースの子エウリュメドーン

クレータ島の有名な王ミーノースと、ニュムペーであるパレイアとの間に生まれた息子の一人である。彼の兄弟には、ネーパリオーン、クリューセース、ピロラーオスがいた。彼らは共にパロス島に暮らしていた。英雄ヘーラクレースがアマゾーンの女王ヒッポリュテーから帯を奪取する冒険の途中でこの島に立ち寄った際、エウリュメドーンとその兄弟は、ヘーラクレースの船団の乗組員のうち二名を殺害するという事件を起こした。これに対し、ヘーラクレースは激怒し、彼らを殺害した上で、パロス島の町を包囲した。島の住民はヘーラクレースに嘆願し、殺された二人の乗組員の代わりに、島の人間から誰でも二人を選ぶように申し出た。ヘーラクレースはこの願いを聞き入れ、怒りを鎮め、ミーノースの息子アンドロゲオースの孫にあたるアルカイオスとステネロスを選び、彼らを伴って島を出発したという。

アガメムノーンの御者エウリュメドーン

ミュケーナイの王アガメムノーンに仕えた御者である。彼の系譜は、祖父がペイライオス、父がプトレマイオスであると伝えられている。彼は主君であるアガメムノーンに従い、トロイア戦争に参戦し、長きにわたる戦いを経験した。しかし、故郷ミュケーナイへの帰還後、アガメムノーンを殺害したアイギストスによって、彼自身も命を奪われたとされている。

その他のエウリュメドーン

上記の主要な人物以外にも、エウリュメドーンという名前は神話の中で用いられている。例えば、怪物メドゥーサを退治した英雄ペルセウスの別名として挙げられることがある。また、ワインの神ディオニューソスとクレータ島の王女アリアドネーの間に生まれた息子の一人であり、英雄イアーソーン率いるアルゴナウタイの一員として金羊毛探しの冒険に参加した人物もエウリュメドーンと呼ばれている。

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